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■ 音はいつでもここにあるから。
え?可愛いってスキルを、いつの間に取得したって? 言ったら南に殴られた。 「もともと子供(ガキ)だったのは認めるけど、お前、今浅ましいほど男(ヤロー)だと思うぜ?」
ああそうさ。 「しかたねーだろ」 珍しくワイルドに決めたら(とか思ってる地点で俺も最近ぶってるよなあ)南は呆れ顔で、「どっちがお前らしいんだか俺も分からなくなってきた」と俯かれてしまった。
音がすんだよ。 ******************************
元凶がやってくる。 「お買い物?」
後ろから狙い済ませたように声をかける。 「あら、また会った。偶然ね?」
あっけらかんと言う彼女はさほど驚いてなくて、(いっちゃなんだけど優紀ちゃんはどっか抜けてるから)それもまた気に食わないのは男認識されてんのか、俺が不安なせいだろう。 「帰るから、途中まで一緒かな?」 歩き出した彼女に慌てて袋を奪った。 「いいよ、これくらい」
いえいえ、そういうわけには行かないのです。 腹のうちを隠して、千石清純(不純だらけ)は微笑む。(どうせ通じやしないのは百も承知) 「任せろって」 少し男を出して。 「そう?ありがと」 優紀ちゃんはお言葉に甘えて、と珍しく預けてくれたのだけれど、 「なんか今の言い方、仁に似てない?」 もっと楽しそうに笑って、俺の地雷を踏んでくれた。(毎度のこと) 「そんなことないよー」
ハハハ…… 「あれ?……よく会うあたりも似てるかな?」
それはあっ君の優しさ。 「俺はね、優紀ちゃん目当てなんだよ?」 「またまた……」 ははっと声をたてて笑う彼女が可愛くて、 「本当だってば」
「嘘のふり」をついた。 「キヨ君、お上手ね」 帰りがけに見かけた彼女は偶然ではなく、この店がお買い物コースだってことは南からリサーチ済みだった。(南は偶然ならいいことを教えてくれるんだよ) 「そんなことないよ。優紀ちゃん、可愛いもん」
黙ってて。 「嬉しいこといってくれるな」
お姉さんがおごってあげよう。 「ありがと」 ペットボトルを受け取って、ふたに手をかける。
そういや、彼女にとってあげたあのパンダどうしてるかな? ――くそ忌々しいやつめ。 ポジティブな思考の流れを待ちながら、俺はお茶に口をつけた。 「ううん、ホントに優秀なボディガードだって思うよ」 優紀ちゃんが腰掛けたので、それにならって…… 「……へ?」 うっかりスルーしかけた言葉を頭の中で繰り返し、とまる。 「あの子ね、時々授業抜けて私に見つかるの。どうしてだろうって考えてた。……ずっと分からなかったのね?」
ああ、亜久津のことか。 「もう分かってるんだね?」
黙ってるなんて俺の思いあがり。 「うん。だからね、キヨ君にはもっと感謝」 「なんで?」
なんで貴女は簡単に受け止めてしまうのだろう。 「だって、仁のこと分かっていてくれてるでしょ?それでこうして代わり役をやってくれる。もっとスマートに……。ごめんね」
『ごめんね(見抜いてて……。)
目が語る言外の言葉に流したかったのが涙なのか、溢れるほどの愛しさなのか、もう俺には理解できなかった。 「あっくん女の子苦手だからね」 大得意『ガキ』のふり。 「母親だよ?」 「全般だもん。俺逆だし?」 可愛くおどけて……。 「ハハハ、女の子泣かしちゃ駄目よ?」 …………………。 「――泣かさない」 ガキになれ!と思ったら思ったで、コントロールできなくて、真剣さを隠しきれずに瞳がぶつかった。 「……本当に格好いいね」
もう黙って。 「そんな風に見たら、女の子的にイチコロだよ?」
女の子はいらない。 「……「元」女の子だもん。分かるな。……もてる理由」 「ね、優紀ちゃん。ちょっと黙ってて……」 それ以上何か言われたら鼓動が五月蝿くなって、話すどころじゃない。
……て……馬鹿か、俺? それでも隣で笑っててくれる彼女が可愛いかったから、取り合えず「ゴメンネ」と呟いた。 「……恥ずかしい」 「機嫌悪かった?」
笑う君に教えたい。
ぎゅっとしようと思ったが、後のことを考えてやめておいた。 「ガキでゴメン」
言って、しょげるふり。 格好悪くても接触を求めるよ、即物的だもん、オレ。 「素直だと思うよ」
嘘ついてることも見抜いてるのかもしれない。 「ぷはっ……」 ペットボトルの中を飲み干して、 「サンキュ」 笑っておいた。 ****************************** 「不毛だな、相変わらず」 南は言う。 「ソウデスネ」 タモさんに答える女の真似して、不機嫌づらを隠さない今の俺はガキ。 「男なんて元来ガキなんだよ」 と、格好つけてみたけど、何より中途半端を格好いいと言えてしまう大人の彼女が憎らしくて、愛しいから……。 「で?」 と、南が俺の真似。 「音も何もお前、彼女の全部の音拾ってどうすんだよ?……きこえねーもんまで聴こえるようじゃ腐ってるぞ。頭」 「沸いてていいよ。俺、好きだもん」 そうだね。 「ついでに夜、鳴き声とかも聴こえるかも……」 ばこっ 南に殴られたー。 「そりゃ、幻想(つーか妄想)だろ」 「だから、ガキはガキなんだよ。可愛いとこあっても、それがOKだったりすんだからさぁ(ほら、付き合ってきた彼女たちみたいに)それ利用できりゃ立派な男だろ?」 「ああ浅ましいな」
浅ましくていい。 E N D ****************************** だらだらしてまふ。(意味ねー) ■ BACK ■ |