■ けしかけた方が責めてるとは限らない


「あっくん、俺さー優紀ちゃんのこと好きなんだよね」
 と一言。

 そう言えばアイツは譲ってくれる。
 少なくともチャンスはくれる。
 分かってたはずじゃん?
 あっくんは優しい。
 知ってたはずだろ?
 その台詞がどれだけ、アイツを牽制することになるかなんて。

 汚い手だ。
 気が狂うね。
 南に嫌われたらどうしよう?(……なーんて。最後のは半分嘘だけど。南はお人よしだから、さんざんこき下ろしても拾ってくれる。――それも気に入らないけど)

 でも、真面目な話、
 散々悩んで、最後の切り札……。
 口走った俺は何やってんだろ?

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「買い物、俺が行くよ」

 亜久津仁は補習。
 知ってた。(わざわざ情報収集しに下の階まで行った)
 最近俺が優紀ちゃんの買い物に付き合ってるのはこないだ出くわしたせいでばれてる。
 宣言しに行ったことなんてなかったけど。

 月曜と、水〜金曜はあいつ。
 火曜は俺。
 なんとなく住み分けもできてたし。

「あ?」

 濁音つきの「あ」の音にはびびりようもなくて、

「そういうこと」

 言い切った矢先、ちょっと嫌なことを考えた。
 ここで一言、俺はお前の代わりにならないと、でも俺がお前の代わりになると……言ってしまったら?
 一番そばの場所をとってやる。
 でも、「子供」になんてならない。
 むしろ逆の……。

「勝手にしろ」

「ああそうする」

 それは照れ隠しだろ?
 んなの俺には通用しないよ。

 ここで一言。
 さあ言えよ、俺。

「あっくん、俺さー………」

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「いいぜ――………………」

   それは亜久津仁がくれたチャンス。
 お情けだと思うか?
 俺は思わないね。
 でも、ラッキーって笑うほどには余裕もなかった。

 俺はともかく奴の承諾に、走り出した。

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 今日こそ言おうとか告白日和だとか……
 そんなこと欠片も望んでなかった。
 ただ、キスくらいしたいなぁとその程度。
 どんな声で鳴くのかとか俺の名前を呼ぶのかとか……
 そこまでは祈ってなかった。

 買い物籠を持って、俺は一歩後ろを歩く。
 立ち位置の危うさに彼女は気づかない。

「ね、ゆうきちゃん」

 背中に落ちた髪が凄くキュートだったのに、首筋が覗く刹那だけ背筋が痺れたような、感覚が押し寄せる。

「ん?」

 ふりむいた瞬間をねらえばいいだけ。
 距離はたった一歩。
 踏み込んで、そのうなじにでも後を残してしまえば勝ちなのに。

 ――いつも女相手にはやってることだろ?
  都合のいいときだけーーこれだからガキなんだよ……。

 別の自分がどこかで笑う。
 その反面でいつもの自分が嘲笑う。

 ――これでうちおとされたらきっとつまんないんだろうな。

 余裕なわけ?
 それとも……?
 柄にもなく考えたら、声が出なくなった。

「……きっていえよ?」

すきっていえよ
俺だけって…。

「どうしたの?」

 彼女にはこんな声じゃ届かない。
 聞こえないのだと知っていたのに涙がこぼれそうだった。
 俺はガキで。どうしようもないガキで。
 なのになんでこんなとき大人なんだろう。

 本気がばれたら?
 彼女が気づいたら?
 ……彼女が受け止めたら?

   どれも駄目だ。

【 仁を見てる優紀ちゃんが……俺は……。 】

 こんな馬鹿な考えは大人じゃなきゃ浮かばない。
 ブレーキを覚えたらアウトだよ。

「……んでもねー……」

「キヨ君?」

「なんでもねーよ……」

 声を荒げてしまった。
 あ……
 これもマズイ。

  「……ってあっくんの真似。上手いデショ?」

 もっと大人なアイツがいるから、俺は笑えないんだよ。
 仁のやつ……。
 大人が素直になるリスクをアイツは知ってやがったな。

 牽制されたのは結局どっち?
「いいぜ。言えんなら……」
 走れんのかよ?
 笑ったあいつのほうが今のところ、悔しいけど一歩リードだ。

 E N D

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ぜってーいつか書き直す。
一部分だけ気に入ってたのに肉付けしたら

ぶー  きにいらない

 

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