File【B】:02    〜 SIDE Seiichi Yukimura

 不二を部下として手に入れられたのは本当にありがたかった。
 頭が回るといえば、第一に浮かぶ参謀が今はいない。
 意図的であるとしても、この状況は思わしくない。
 
「けれど仁王たちには言いたくないしね」

「幸村、お前相変わらず負っけず嫌いなー」

(それだけじゃない)

 仁王ならず、他のメンバー――真田だって巻き込みたくはなかった。
 ただ、そうした時ですら目の前の彼にはバレる予感があったのだけれど。

「そうでもない……つもりなのだが?」
 
 屋上でのんびり。
 こんな風に過ごせるのは、不二のお陰もあるが、やはりこの人物が欠かせない。
 好んで自分の方に寄ってくるだろう予測もつくから、どうせこうなる道だ。

「俺にはそう見えっぜ?」

 やんちゃな顔で戻ってきた子飼いの情報屋は会社専属というよりも、むしろ自分専属なのだ。
 強ちその読みは間違っていないのかもしれないな。
 俺は、褒めてくれろとさり気なく書かれた顔を引き寄せ、なんとはなしに肩に寄りかかった。それから、相手の言うとおりなのが悔しいので表情が見えないだろうことを確かめて(この体勢では見えようがない)

「……そうだな、仁王を使うならもう少し何とかしておきたいか」

 「やっぱり」と返される呟きを聴いて聴かぬふりで通す。
 ついで、とばかりに、情報をくれる丸井ブン太に、こちらも密やかに「会社」ではない指令を出しておく。

「丸井、不二に任せてるから、そっちはそっちで好きにやっていていい」

「仕事じゃねーんだろぃ?ちゃんと名前で呼べって」

「そうだね――ブン太。そちらは任せた」

「そうこなくっちゃな。まかせろぃ」

 ブン太はおどけてみせる。
 これは何かしでかして後で真田(警察)と、ジャッカル(ストッパー役)が必要になるかもしれない。
 だが、それはそれでありだろう。
 事態の収拾を図るのは部下(不二)であり、丸井ブン太に対して持つリスクは俺は勿論、会社側としても最小のものだ。
 万が一見つかればあちら側には柳が待機しているだろうし、そもそも榊の会社に直行するような具は犯さない。
 ブン太は情報屋というよりも、街の裏側を遊んでいるストリートの若者達そのものだ。
 危うきに近寄りすぎず、確実に得られそうな『美味しいもの』の匂いをかぎ付けてきてくれる。
 表だって動く――的は、不二でいい。

「本人も知ってるのだから、上手く的を逸らそうとしてくれるだろう」

 捨て駒にする気はない。
 が、使えるものは使う。
 シンプルで、彼も好きそうな考え方だ。
 再び夜の屋上から街に下りていくブン太の後姿を見ながら、俺は何故か不二周助の心配をしていた。
 ブン太はそれだけ気が置けないということだろう。

「どっちが使えるのか――純粋に興味が出てきたな」

 彼らはテニス同様、同じ土壌〔フィールド〕で争うことはないのだけれど。 

TO BE CONTINUED =SIDE 日吉


幸村さん 白いのか黒いの?

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