氷の背徳  ともだち >日吉・長太郎
【SIDE  日吉】

「先輩は……入部届けを待ってる」

「俺は出さないよ」

 長太郎は笑う。顔の暗さが数年前を思わせるようで日吉は、ひるみかけた。
 でも、ここで言わなければ 誰も止められない。そんな予感がある。

「甘えるな、来ないなら来ないでいい」

「……なら、放っておけばいいだろ。日吉。おまえ、そんな友情劇一番きらってたじゃないか」

「ああ」

「なら、なんで」

わざと怒らせようとしてるのだろう。
長太郎はこちらを見ようともしない。目を合わせられないことで、日吉のいらいらはますますのものとなった。

――それが甘えだっていうんだよ

思ったと、手が出るとどちらが先だったか。

ガンッ

気がつけば、突きつけたこぶしは、ドアを鳴らし、長太郎の横をすり抜けていった。

「っ」

一瞬ひるんだ相手は、すぐに顔を戻すが、もう遅い。

日吉は見てしまったのだ。
後悔するような、泣きそうな、長太郎の表情を。
跡部が「待つ」と宣言したとき、正直ふざけてると思ったものだ。やる気がないのに、まつなんて、あの人はいわないとしんじてたからである。
でも……

「見損なった」

そう宣言しながら、長太郎の入部届けについてはこれ以降きっと自分は文句をつけない。そう、日吉は感じた。

長太郎がテニスをやりたい、やりたくない、は分からない。
事情も知れない。
ただひたすら荒れている長太郎が自分で答えを出さなければならない壁にぶつかっていることだけは感じ取れたから。

「決めるのはお前だ。勝手にしろ」

吐き捨てて、歩き出すもこびりついて離れないその、わずかに充血している目。

「――勝手にしろ……まきこんでんなよ」

軽蔑にきりかえながらも、きっとどこかで思い出すその表情を、かきけすように、日吉は廊下を進んだ。
止めようと、廊下の向こうからジローが、跡部が、のぞいていると知っていたが、反応を返す気はさらさらなかった。

昼休みの廊下は一瞬騒然としたが、それもすぐ納まっていく。
ちょっとしたいさかいですと、即座に説明する跡部は、何を知っているのだろうか。

――……知りたくなどない。

ただ自分はテニスの腕を落とさず、そのまま励むほかない。結局誰もが他人なのだ。

長太郎不調の原因と、 一年前に、岳人と跡部が殴り合いのケンカをした事実――そのことを思い出して跡部が長太郎の入部届けをとっておいたのだと聞かされるのは その数か月後のことだった。


薔薇設定でごめん。やってなくてもだいじょぶ。あとオリキャラは出しません。ただちょたのお家は複雑で、跡部も知ってるくらいの名家。恋愛がらみでもめてるのと進路でもめてるよっていう。日吉からすると 自分がどうにかしてあげられなくてもどかしいのと、恋愛がらみなんてさらさらわからんのもあって、しっかりしろよゴラァ的なかんじ