氷の背徳  歴史は繰り返す >跡部・じろー・宍戸・忍足・向日
【SIDE  跡部景吾】

「鳳の入部届けが出てない?」

大方は予想がついていた事態だが、まだまだ予測のいきを下りていないだけに、流石の跡部もびっくりした。
長太郎の家が、いろいろ複雑であることは各方面からきかされていた。
古くからの家系だからこそ、このご時世ですら「華麗なる一族」もどきのこともある。それは跡部とて同じだ。

――俺の方はどうにかしているからいいが……

何かあったとしたらそのあたりだと見ている。
高校に入ったとたん、あれこれ言いだす人間が多かった自分を顧みてと……その他のリソースがあってのことだ。

「けどよ、長太郎ならこないだ出すっていってたぜ?」

横から宍戸が呑気に言う。
ジローと不二が、
「うーん、忘れてんのかな?」
「ほら、忍足んときみたいに」
と、一年前について指摘した。

「――あのな…それいわんといてや」

「馬鹿メガネは黙ってろ」

「ひどい……」

「追っかけやってて、うっかり来なかった馬鹿はどこのどいつだ?」

「ハイ、オレデスネ……」

「おかげで、向日にも影響してさんざんなことになったよなぁ?あーん?」

「いや、あれは岳人の個人的な――……なんでもありません。跡部様。そう、にらまんといてや」

 黙ってます。
 忍足は宣言するとしずしずと引き下がった。

「――よし、最初からそうしときゃいいんだよ。……で、日吉は放っておけときれて、ペース崩してるってか?」

 ――予想外だな……
 長太郎の方は根が深く、ある意味で解決まで公なる可能性を考えないわけでもなかった。が、それが同学年にも影響を与えるとなればさっさと解決する必要がでてくる。
 多感な時期、ですませるには惜しい。
 高等部では何が何でも立海に勝ちたい、そんな思いがあるのだ。

「けどよ、跡部。どうすんの?別にこなくたって層はあついっていいたいとこだけど、日吉も鳳も即戦力として計算してたんしょ?」

「ああ……」

 それには出来るだけ、使えるものは使いたい。
 素質がぴかいちの二人をないものとカウントする事態はさけたい、ジローのいうとおりである。

「知ってるもんな。おれ!岳人んとき、先輩たちにさんざん叩かれても、跡部が何とかしてくれたじゃん」

「たしか、スランプの向日と殴り合いに発展したっけ。あんときは俺もびびったぜ」とは宍戸の余計なひとこと。

「……」

 沈黙。
 ここに当人がいなかったのが幸いかもしれない。
 その件については、また別の機会に語るが、今やなかったことにされているような事件なのである。跡部景吾が向日岳人と廊下で殴り合いをする、など……。教師の中でもみなかったことにされているほどの事実。

「せやって、あんときと状況はちがうんやで?」

「――ああ」

 ――実際そう変わらない気もするがな。

 あのとき、岳人がやらかしたのは交際とテニス両方の行き詰まりで……思春期にありがちないざこざだった。今回だって根本はそう変わっていない。
 ちょっと家の事情が特殊だというだけのこと――跡部はそう見る。

 ――だが……

「なあ、跡部って長太郎と結構親しいってか、家的にしってるよな?なんかねーの?あいつんち。俺も流石に聞きづらくてそのあたりきいてねーし」

「宍戸」

「あ?」

「馬鹿はだまっとけ」

「おい!ざけんな!」

「……複雑な家庭環境なんてのは、大したことねーんだよ。自分次第でどうにかなる。それより鳳の場合は勝手に思い込んで、動くタイプだ。少し放っておけばどうにかなるだろ」

 これは感触として思うこと。
 そして、

「なあ?向日」

 タイミングよく、ぎぃと扉を開けて入ってきた元青春野郎に言えば、「あー?」と返事がある。

「――鳳の話だ。てめぇと対してちがわねーみたいだからな」

「あー……スランプか」

 納得したふうの向日岳人。それと、事情を知るものだけが分かるように付け足す。

「だけじゃなかったよな?」

 すなわち、友情+愛情のもつれ。
 馬鹿らしいが、そんなことだって男子高校生には大問題なのだ。
 岳人も、そんなことめんとむかっていわれたら「女じゃあるまいし」と笑い飛ばすしかないだろうが、そこは口にされない分、素直になれるところ。

「まあ……そういうのは、当事者の問題っつーか……なあ?侑士」

 何となく、肯定を返す。

「?」

 が……ある意味で本当は一番今その手の問題(恋愛問題)に首をつっこんでいる難波の追っかけ魂=忍足侑士は同意どころか首をかしげた。

 実は相棒ながら彼は、当初その恋愛^^「あこがれのひとへの追っかけ」に夢中すぎたため、相棒(岳人)がまさか恋愛もダブルでかかえて悩んでいたとは知らなかったのだ。

「あ、そっか。お前、知らなかったっけ」

 「ま、いいけおd知ってたらめちゃくちゃ口出ししてただろうしな」と、
岳人は納得して話を切り上げ、跡部に向かって

「その判断でいいと思うぜ」

 簡潔に答える。
 
 ――向日が言うならそうだろう。

 跡部は、やはり「放っておくか」と決意を口にした。
 他のめんめんも事情は分からないながら、「退部かどうかで揉めあって、殴り合いに発展した二人がいうなら」と納得して、

「そーすっか」
「そのうちくるって」
「困ったら今度は日吉がいるしな」
「日吉と鳳の殴り合いかー。ま、いいんじゃない?」

 こんな感じで意見をまとめにはいった。
 かくして、どうやら御家事情と、愛情友情のもつれ、テニスのスランプをかかえた長太郎の扱いは「入部と同時に休部」と。そう決まったのだった。

薔薇設定でごめん。やってなくてもだいじょぶ。あとオリキャラは出しません。ただちょたのお家は複雑で、跡部も知ってるくらいの名家。恋愛がらみでもめてるのと進路でもめてるよっていう。で、一年前に規模は違うけど、岳人がそれで部活でてこなくっていざこざしてて、「まあ青春っすね。今年も」的になってる上級生。相変わらずおっかけやってて、立場の低い忍足。