不二兄弟とレギュラー 続き(MAIN跡部&不二兄弟) 

 ところで裕太は「兄貴に悪戯をしかけられてよぉ」という会話を幾度となく聞かされていた鳳長太郎がびっくりするほど、文句をもらさなかった。
 跡部の命令だからなのだろうか。
 そう日吉と鳳が首をかしげるのを横目にさっさと兄の方に近づいて、何やらいろいろ聞いている。
 お題はダブルスだから得るところは大きいのかもしれない。
 先輩たちにとめられながらも、不二(兄)がダブルスに興味を持っていたことは下級生の間でもわりと有名である。
 
「ふうん、んじゃここはこんな感じで……」

「そうそう、で、軌道を修正する」

「げ、それはねーよ……」

「えー?何でわかんないのかなー?」

「んだよ」

 喧嘩腰ではあるもののなんのかんの平和な光景である。
 横にいる宍戸まで、茶々ならぬ補足説明をいれはじめ、そこからはますます普通の指導っぽくなっていく。
 裕太は裕太で中学に入り宍戸あたりとつるむようになったせいか周助が必要以上に構ってこなくなったこともあり、まあまあ素直に教えてもらっている様子だ。
 この弟君が普段、しょっちゅうではないが、兄によってとんでもないめには遭っていることは周囲も(跡部より関わりがある分)分かっていたが、忍足や岳人まで動員されていることもあり、何もなさそうだ。
 にしても周助のやつ、へえ大人になったなーと周りは関心すらしていた。
 が……

「こんな感じかな。裕太、分かった?」

 そこで、静かに兄貴ぶっている兄周助に対して、ダークフォースよろしく、

「わかりました、不二先輩!」

 急にかしこまり、びしっとする弟裕太。

「へ?」

 一応部活だから、とはいえ、それまでは兄弟まんまの会話だったのだが、不意打ちに「お前も同じ苗字だろ!」な呼び方である。
 周助が一瞬ぽかーんと固まる。
 周りがお?と、弟の方を見やれば…にやーと笑っているではないか。
 明らかにわざと、だった。
 どうやら、これは裕太なりの反撃らしい。
 ちくしょうとばかりに、不二(兄)は裕太のケツ蹴った。

 そこでまたタイミングがいいんだか、悪いんだか

「何の騒ぎだ?」

 跡部が駆け付ける。
 既に低レベルな兄弟喧嘩に発展した二人の会話。

「じゃあなんて呼ぶんだよ?周助先輩?」

「む。」

 ――何かと思えば呼び名、かよ。

 と跡部は前の応戦をみていないものだから、頭を抱えた。
 ついでにいえば、ここに来るまでに、跡部は跡部なりに、「投げたつもりで、裕太と周助の呼び名を真剣にシミュレーションして悩んでいた」ことを付け足しておく。
 つくづく苦労症である。

 反対に、やるじゃん弟、だの、裕太すげーなだのとすっかり地味ながら兄ばりにキャラクターを印象づけた彼に、賞賛を送る他のレギュラーたちは、全く呼び方にこだわっていない。

「お兄ちゃんって呼んでやれよ、少年」
「裕太、いいぞー」
「いいやん、先輩って。そういうプレイもありやで」
「忍足、遊び人は黙ってろよ。引退したんだろ」
「すっげー、すっげー兄貴に、芥川先輩とか俺うかばねーし!」

 大騒ぎである。
 大喜びである。
 ついでに、これで完全に「裕太」は「不二の弟」ではなく、ただの「裕太」に昇格した。(キャラクター的な意味で)
 もともと宍戸をはじめ交流のあるものもいたが、強烈に根付いてくれたのである。
 まあ跡部からしても、バカバカしいながら、「この程度の兄弟喧嘩はかわいいもんかな」とちょっとうらやましくもなる(一人っ子のさが)のだが……
 そこで終わらせないのが不二周助クオリティ。

「ゆーたのくせに なまいきだ」

 馬鹿みたいな捨て台詞を残して、兄の方はコートを去って行ったのをみて、跡部ははたと我にかえる。
 
「お前、まだ休憩じゃねーよ!」
 
 初回の合同練習くらい部長らしい貫録で終わろうと思っていた跡部新部長だが、ここにきてシャウトを余儀なくさせられた。
 流石に二年目の付き合いだ。
 わかり始めている。

 さっき休憩はまだだといったばかり→勝手に今休憩に行く周助。

 ――それが狙いかよ!
 
 間違えなくそうだろう。
 最初からではないのだろうが、裕太に便乗して休憩をもぎ取る兄の方がやっぱり問題児だった。
 気づけば他のメンバーもわらわら……

「おうおう、じゃ、休むか」
「ほな、五分な」
「次、ダブルスの模擬からでいーよな?跡部?」
 などなど……好き勝手散り始めているではないか。

 ――兄弟ってやつはろくでもねぇ……

 もちろん裕太に責任はないのだが、不二の便利なアイテム=弟……いや、むしろ「またも不二の仲間に一人追加」という構図が脳裏にふと浮かぶ不幸な部長。


 しかしながら、跡部も跡部でだいぶ強くなっていた。
 自分を無視しているころよりは、近しく感じた不二周助への距離ゆえか。
 休憩後、裕太の「なかなかいい性格」を利用して、

「ダブルスを適当に組め」と命じ、

「お兄ちゃんと組もうよ」と案の定言いだした不二の横で、

「俺様が組んでやってもいいぜ?」
 
 軽く裕太に持ちかけたのである。
 そして、兄からすればまさかのまさかであっさり「なら跡部さんとする」と承諾した裕太とともににやり。
 うっかり素で「え、なんで。」と動揺する周助の顔を見て、一本とった満足感に微笑むのだった。
 そこで気付く。
 ――どうやら裕太はジョーカーだ。
 彼こそ周助をびっくりさせる唯一の方法。
 ただし、何せトリックカード。
 必ずしも兄SIDEで動かないだけであって、どっちに転ぶか予測のつかないもの、それがこの弟不二裕太。
 跡部の中でも、ここにきて、彼のキャラクターがしっかりを刻み込まれた。(兄と完全に無関係ではないが)
 かくして不二兄弟の認識は部長含め各レギュラー陣の中で各々しっかりと根付いたのである。
 とりあえず二人とも同じくらい強いな(Notテニス 性格的な意味で)、というのが、準レギュラー全員の見解だったとか。

 END

  結局まとまっていないんですが、まあ兄弟してフリダームになるよ、氷帝だとという設定。裕太はこっそりギターも得意です。