練習試合 一回目 氷帝編 その1(MAIN跡部・ALL) |
「アーン?」
「何度聞きなおしても同じだよ」
滝はいいやがった。
氷帝には副部長はいない。
だから新体制になって正直なところかなり苦労した。
結果、唯一の役職、会計に就任した滝にはそれなりに迷惑をかけた。
それは認める。
だからってこんな仕打はねぇだろ。
「怒らないでよ。こっちが出す直前でかき変えられたんだから仕方ないだろ」
「相手はフジなんだから」と珍しく苦手の目を向ける滝。
これ以上の恨み言は無駄か……。
「それに『ダブルスやりたいんなら他の組み合わせもそれらしく考えるんだな』ってはきすてたのは誰だっけ?」
「……」
「それなりに考えたみたいだし、皆承諾してる様子だからそのままでいいと思うけど?」
ちっ
思わず舌を打つ。
何が、今からの変更は面倒、だ。
萩之介お前分かってて出しただろ?
気付いてない?なわけねーよな。
気付かなかったんなら、なんで組み合わせも覚えてんだよ!
* * * *
試合当日、会場校の門に集合した面々にオーダーを発表する。
きょとんとしているやつらが多い。
前もって言わなかったのはあれだ。
せめてもの優しさ
――と言いたいところだが、単純に二度とこの組み合わせでやることがないとふんだからだ。
確かに新体制としてできるだけ様々なパターンは試しておきたいが……。
無茶にもほどがあんだろ?(そういう組み合わせなんだよ、今回やつらが書いたのは)
脱力と怒りとどちらをとるべきかきめかねたとき、横から「へえ」と呑気な声が漏れてきた。
「んだ?宍戸」
「いや、珍しいなと思っただけだぜ」
だろうな。
あっさり承諾するなぞ考えずに悪戯したつもりだろう。
これだから馬鹿は困る。
「マジでやんのかよ!」
比較的常識があるのはしってるが、お前も止めろよ岳人。
ジローは……いうまでもないな。
オーダーを握り締めて間極まった様子。
これはうるさくなりそうだ。
こっそり距離を置いた。
というか、ジローよ、お前までダブルスにまわってどうする?
「相手の学校分かってんのか」
いや、ジローは分かってるからこその選択なんだろうが。
よりによって立海だからな。
幸村・真田・柳・手塚もろもろ……化け物がごろごろといやがる名門校。
力試しとしては持ってこいの相手になんであんなフザけたオーダー送らなきゃならねぇとは……。(じろーの場合丸井とやれりゃなんでもいいんだから話にならねー)
「まあ、ほな、オーダーその場で決めればよかったやん」
茶茶を入れるあたり忍足も話はしっていたんだな。
まさか俺がゴーサインだすとは思いもしなかったか?
俺だってそうしたかったわけじゃない。
「あっちからの希望なんだよ。なんでも【全てのスポーツは戦略で始まる】とか。【今から既に始まり。宮本武蔵だ】とかな」
愚痴るのも馬鹿馬鹿しい顛末なんだが……なかなかに立海もやってくれる。
何せ、顧問に渡された携帯にかければ電話口の小難しい声に、そんな理屈を並べたてられ……
眉根を顰めたところで、突然割り込んできた、場にそぐわない弾んだ声の主が「いいよな?約束やぶったらハリセンボン飲ますから」と決定を下してきやがった。
後で、最初に出たのが柳で、携帯を取り上げたのが、あの新部長幸村だと分かったが……ありゃ反則だ。
試合のときとは比べ物にならない、がキみたいな浮かれたこといいやがって。
(いっとくが、別にハリ千本にびびったわけじゃねーぞ。断じて)
「さすがの王様も化け物の前じゃ形無しかいな」
眼鏡がほざくな。
似合ってねーんだよ。突然かけてきやがって。
まあ、俺が何かする前に、忍足には、歓喜に大暴れ(飛びはねて叫んだ)ジローのアッパーカットが炸裂したから今回は不問にしてやる。
痛そうだしな。
「まあ、立海も一試合フルのつもりはないはずだ。提出した組み合わせ以外も時間が余ればやるからそんときはおとなしく従えよ」
明らかに不二を向いてやる。
――が駄目だな、楽しそうだ。
コイツはそんなに俺を困らせたいのか。それとも単純に気分で決めたのか。
不二が選んだダブルスパートナーの欄には、俺の目にどこも異常がなければ「跡部景吾」と書いてあった。