ヴァンパイア(聖ルドルフ教会軍SIDE)   >暗躍前夜 

 ヴァンパイアが取り締まられる
 白羽の矢がたったのは新人――裕太だった。
 今年配属になった彼の家が、ソチラの家系だった為だ。
 ――お前だったらよかったのにな。
 観月は自軍のトップを思い出して、ため息をついた。
 例え裕太が【入れ替わり】の人間とはいえ、相手は相当に大物だと聞く。
 失敗の確率よりも、あの後輩がそちら側に戻ってしまうのではないかということが怖かった。
 ――【入れ替わり】が人間に戻った例はないが……。
 
 こんこん
 考え込んでいると、ドアを叩く音がした。
「観月、『将軍』が来てないんだけど?」
 執務室に尋ねてきたのは観月とは教会の同期――木更津書記官だ。
 そういえば、と観月は思う。
 噂の彼は朝礼に顔をみせていなかった。
「恐らく寝てるんでしょう」
 呆れ調子で返すと、木更津は「大変だね」と儀礼的に言った。
「なら金田に仕事させておくから」
 そう、一言つげて、部屋を去っていってしまう。
「……ええ。本当にあの人のおかげで……」
 冷めた紅茶のカップを片手に、愚痴が口を着いて出る。 
 馬鹿のトップと切れ者のナンバー2。
 調整は楽だが、教会側からも軍側からも分かり安すぎる構図が逆に問題となっている。年寄りの文句はともかく、他国の視線への対策が早急に必要とされていて、観月の仕事は倍になっていた。

「どうかしたか?」
 ひょっこりと、執務室のドアから肌の黒い長身の男が覗いた。
 突然の噂の当人の登場に、観月は慌てて口を塞ぐ。
「赤澤!アナタ、指導はどうしたんですか?」
 ――聖軍(聖ルドルフ公国の教会専属軍隊)の将軍が公然とサボってどうする?
 観月は大司教、協会側の指導者として本来ならば同等の地位にある。
 でも、権限上、祈りと説教以外の実技は赤澤の担当。代表も『将軍』にあるのだ。
「サボった」
「知ってます」
「裕太が指名されたんだろ?」
 相変わらず勘のいい男だ。
 観月は顔色を変えないように、ゆっくりと単語を区切りながら
「当然です。彼はそのためにここにいるんですから」
 告げたが、
「寝返るとは思えねーけど、心配じゃねぇ?」
 赤澤は不安を見抜いた。
「何てことありませんよ」
「観月」
「……大司教と呼びなさい」
「今更だろ。つーか、まだこだわってんのか?『闇の主』に……」
 闇の主、ヴァンパイアの中でも相当の古株だ。
 名門不二家の長男――裕太の兄という説が堅い。
 観月は直接打ち合って、散々侮辱された挙句に逃げられた苦い経験があった。
「……まだ相手にさせたくないですが、上の移行ですので」
「俺はまあかまわねーけど、今時ヴァンパイア取り締まる国ってのも時代遅れって感じはするよな」
「アナタは言う立場にないですよ『将軍』」
 ……とはいえ、実際、希少のヴァンパイアは既に人との共存に務めており、暴走したものを駆る為雇われたヴァンピール(ヴァンパイアの同属)以外、彼らに敵対するものはない現状がある。
 ヴァンパイアに対して規制を敷くのは、今や聖域を主張している聖ルドルフくらいのものなのだ。
「観月は裕太、見てて考えがかわらねーの?」
「確かに裕太君はいい子ですが……アイツの正体が分からない以上馴れ合う気にはなれません」
「とか何とかいって、今日も聖歌んとき教えてたじゃねーか」
「どうでもいいですが、業務をこなしてきなさい」
「へいへい。……観月も偶には参加しろよ。影で俺と鍛えるんじゃなくて」
「僕の腕はご存知でしょう?」
「まあな」
 赤澤はあっさりと引き下がった。
 一人残された観月はもう一度だけと言い聞かせて、ため息をついた。
「アナタに任せられるんだったらそうしてますよ……」
 そもそもの教会の狙いなど知ったこっちゃないが、自分の狙いはヴァンパイアでなく(『主』は別だが)危げな動きを見せてるヴァンピールたちだ。
「……立海は何を考えてる?」
 彼らを操っているに違いない公国の方を、窓の外に仰ぎ見て、観月は今日の作戦を練り始めた。
 取りあえず目の前に化せられた義務が優先だ。
「『不二』か……」

分かり難くてすみません。きちんと分かるようにそのうち並べなおしつつ補完します。
これで不二の『思い立ったら〜』本につながります。
HPでは襲撃のルド側をUP予定。HPだけで内容分かるようになるかと

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