「どいて下さい。っていうか……仕事じゃないんですか?」
あのですね。
流石に、そろそろ出かけないと道場がマズイことになってるとおもうんですが。
は足元に転がっている「彼」にむかって、布団を押し付けた。
ばふっ。
回避するどころか、自らそれに頭を突っ込みながら彼――沖田はいう。
「えー、休む。ちゃん、言っておいてよ」
「土方さんにですか?なんで、私が????」
「いいでしょ? 暇なんだし」
「暇じゃないですって!」
この後、炊事もあるっていうのに、何をいってくれるんだろうか、このおひとは。
――大体、いっつもぐうたらと………。
もちろんそれだけでないことは、分かる。分かっているが、いちいち邪魔をしてくれるのは、どうなんだろうか。
「ねえ、かまってよ?」といわんばかりだ。
「ねこか?こどもか?!お前は!」
叫びたい。というか、叫んでるわけだが……
「…………ちょっと、体調がよくないんだよね」
といわれてしまえば――
仮病か?仮病なのか?と、どこかで疑いながらも………
「ちゃん?」
「あーーーーーーーーーーっもうっ!わかった。わかりましたよ!私が代わりにいっておきますから沖田さんは寝てて下さい!」
「布団…………」
「はいはい、そこどいて。敷きます、敷くから寝っ転がってないで。……悪化したらどうするんですか」
「はーい」
嬉しそうな声は無視して、沖田の部屋に入る。
なんのかんの、「世話」をさせられてるのはどうなんだろうか。世話をこっちがやいてる、っていうべきなんだろうか。
不本意だが、心配してしまうのが性分というもの。
は、手際良く布団に大きな子供を寝かしつける。(もう慣れてしまっている自分がかなしい)
――といいますか、こんなにこの人ってダメだったっけ?
数週間前までは、もう少しきびきびしてたような?
思うが仕方ない。
「あ……そういえば、沖田さん、昨日の書類は提出しましたか?」
「うん。近藤さんにだから」
「で、もう片方の、副長への書状は?」
「あー……忘れたかも」
「かもじゃないです!今すぐ出して、それももってくから」
「んー。あと、なんだっけ?
「それから……」
こう毎度自分が補佐もどきになってる現状もどうかとおもうが……
「取りあえず、いいから寝て」
仕方ないのだ。だって、こんな――悪戯っ子みたいに、ぬくぬくと掛け布団を抱え直されてしまっては。
「でも、すぐ出せって……」
「………あーもういいから」
――というか、何でそんな弱い目をするんですか!あなたは!
そう叫びたい。そんなふうに見られたら、私がやるっきゃないじゃないですか
てか、もういいです、しますよ、全部……
そんな我儘を聞いて聞いて聞きまくった挙句のこと。
「?」
土方のもとへ報告にいこうとしたの袖に何かがひっかかった。
見れば沖田の手。
「まだなんかあるんですか?」
今度こそ呆れよう、もう面倒みるのは止めよう。そう思って、最後の質問のつもりできいたら
「かみに、ふれて?」
「っ」
何それ!勘弁してって……
嘆きたくなるようなお願いに言葉を飲む。
しかし、ただの我儘かと思われたそれは、そういうわけではなかったらしい。
「熱、本当にでてきたかもしんない」
今度こそ弱弱しそうに、言う沖田。
――やっぱり仮病だったんですか?!!!
思いながらも口にはせず、脱力しながら……は静かにその柔らかい前髪に触れた。
熱なのか、餓鬼なのか……温かすぎる体温にほっとしたのは気のせいだったのだろうか。
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おまけ
「……悪化、も何も、あの何処が病人なんでしょうか」
の報告f直後、土方の部屋に降り立つ影が一つ。
「――ああ、まったくだ……山崎」
あれが病人なら、だらだらしてる新八なんぞいつでも病人扱いできるってもんだ。
土方は深くため息をついた。
「世話を焼くのはいいが、増長して……一番隊の責務が若干滞っています」
「あれを――どうにかしてくれ」
「あれ、といわれましても、沖田隊長の場合いつでもあの調子なのですが……」
「知ってる。――だから、そっちじゃない。の方だ。……なんなんだ、あれは――」
確かによくやってくれている。炊事も洗濯も、彼女の手伝いで大分屯所としては楽をさせてもらっているのだ。いるのだが……
よもや沖田が、彼女の手によってこうなるとはおもってもみなかったのだ。
「あれはなんだ――……その……。・ダメ男製造機か?」
一つ一つ確認して、補佐どころか母親役を引き継いでしまっているに沖田はどっぷり甘えている。しっかり怒って、やる気を出させているという点では、これなら、まだ姉のみつを屯所に連れてきた方がよかったのではないか。
頭を抱える土方に、山崎が繰り返していた。
「なるほど――ダメ男製造機とは……上手い例えですね、副長」
極めて真面目なその口調に、土方は、もちろん何の返答もできず、ただただ深くため息をつくのだった。
END
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