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――なんだろう。調子が悪い
だからこそ、怒られないですむあの人を使おう。
そう思いついた、悪戯っ子一人(沖田とある意味いい勝負)の、これは、どうしよもない物語。
* * * *
「粗茶ですが」
おしとやかにを心がけて、お茶をいれる。
普段ならば、この役はか斎藤(いないときは、なぎ)がしている。
が、誰がしても基本的には問題のない行為だ。
――機密事項を知らないようにって心がけくらい、できるし。
というわけで、今日はがその役を引き受けていた。
ほどよい加減だけ心得ておけば、文句を言われることもないはずなのだ。
そそと、茶を注ぎ、碗を差し出せば、
「おう」
予想どおり振り向かない声が、時間差で戻ってきた。
――あー、結構忙しい、のか?
少しだけ罪悪感もあるのだが昨晩のうちに、には正当な理由もくっついてきていた。
【最近、副長はこんつめすぎている……。急ぎの書は大方片付いたというから、明日くらいは執務の速度を落としてもいい頃合いかと】(BY山崎)
――ってわけだから、仕方ない!
仕方ないも何もないのだが、残念ながらここには止めてくれる人はいない。
仕上がった書類に、印を押したタイミングを見計らって、
「土方さん」
さっと後ろにつけた。
「あ?」
なんだ?とふりむく、そこを覗きこむ。
思わぬ接近に、鬼の副長は焦ったようだった。
残念なことに、もてる副長土方歳三は女慣れはしていても、慣れしていなかった。
遊女にもない位置の取り方に少しだけ退くと、
「休んでください」
は、その一瞬のひるみを利用して、真面目なことを言ってみる。
「あ、ああ……。か。どういう風の吹きまわしだ?」
敵意はない。心底吃驚しているのだろう。
「んー、山崎さんも心配してたので」
私が来てみました。
――他の子がいうより休みそうだし。
効果を考えると一番遠い自分が、一番効くというのも、本来おかしな話なのだけれど。
どうも、予想はぴたりとあたったらしい。
「――お前を派遣するほど心配されるとはな」
そりゃまずいから休むか。
半分本気で(半分は茶化してるのだろうが)こちらを向き直り、碗を仰ぐ。
「お、意外とうまいな……」
「お茶くらいはいれられますって。失礼な」
山南さんに散々文句いわれている身だ。やむを得ず上達もする。
「でも、お前――それだけで、来るようには思えなかったがな」
「まあ」
暇なんですよ。と、言ってしまえばいいのだろうが、それもまたつまらないので、敢えて誤魔化す。
そうして、は思い出したのだ。
――そうそう、たしかめるんだった。
山崎でも、山南さんでもあてにならなかったこと。――自分がが熱があるかどうか……を。
「土方さん」
「何だ?」
「あの……」
自棄に近くないか?と言われても、元が近いのでスルー。
じぃっとみた後、思い切って、正座から膝立ちに変える。
それから――
「っ」
「んー」
「なっ、何して」
あたふたする土方を無視して、その横顔に手を添え――そうして、
こつん。
額を押し当てた。
「っっ?!!!!!」
「……ない、かな?」
――熱ってほどじゃないかな?
だって、土方さん熱いし。
「あー、あるいは、そっちのが熱ってことも???うーん?」
「っ、お、お前っ」
「…もう一度いいですか?」
「は?」
「は、じゃなくて」といいながら、
こつん。
額と額が触れる。
まるで、口づけでもするくらいの距離だけれど――
――あんま意識しない。うーん? すっごく整ってるんだけどね。顔……
と、もはや熱と関係ないことを考える沙希。
熱を確認し終えたら、もう用はないとばかりに、元の姿勢に戻った。
「熱ぽいかな?って思って」
「あ、ああ……(俺が、か?)」
「でも、大丈夫そうかなって」
「あ、ああ」
ふと、は、土方の声が多少どもっていることに気付いた。
――うーんと?
土方さんって
意外と遊び人っていわれるほど、そうでもない?
実際は、そうでもないどころかしっかり遊び人だった土方であるが……まあ、相手が相手。触らぬにたたりなしと思っている土方歳三独身色男。
残念な誤解をされていることに、幸か不幸か彼は気付けていない。
「……心配はいい。兎に角下がれ」
「あー、はい」
あのこつん、はちょっと楽しかったと、こっそりと。妙な味をしめつつ、は大人しく引き下がる。
熱もなさそうだし(自分の)元気だと確認出来てよかったなという気持ちが勝っていたから、わがままもそれ以上言わなかった。
そうして、ちょっとした戯れ、程度でその場はおさまったのだが……
割りを食うのは
「土方君、ちょっといいですか」
「おう、山南さん。どうかしたか?」
「昼間に、がお世話になったときいたのですが……」
「おう? あっ、あ、あれはな。アイツが勝手に」
「は? 何のことですか? ――……どうやら、詳しく話を聞く必要がありそうですね……」
とのことを誤解されてはいないかという過剰な防衛本能のおかげで、墓穴をほり……
あせりながら、事情を話した挙句「ああ。熱っぽかったのは、の方でしょう。確認したいけれど、羅刹(わたし)では体温が確認し辛いと、ぼやいてましたから」
あっさり、ネタばらし(兼 勘違いの恥さらし)にあう、土方の方なのであった。
END
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