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「っ」
首筋に、つうと冷たいものがあたっている。
傷みは感じていないが、にはそれが何かわかった。
「何するんですか」
血を吸うならそれはそれでかまわなかったが、違うだろうなと思う。
「たまたまた近くにあっただけですよ」
貴女の首が。
「からかわれてもあげられるものなんて」
「ないですか?――それこそ、この首筋かみきっても―」
「いい? ならそうすればいいじゃないですか」
馬鹿馬鹿、この馬鹿。鬼馬鹿ふざけるな。
そうしてくれといったのに、「したくない」「まずそう」といって、酒で誤魔化したのはどこのどいつだ。
禁欲の末に仕方なくとか、それくらいの存在だってこと分かってるけれど。
――我慢できない弱さのが見たくないんだってば。
何で分からないかな。
いや、分かっていてもどうしようもなくなっているというのなら、それはそれで問題だ。
たしかめなければならない。気持ち何かよりもずっとそっちの方が大切で……
――そっちさえ、間違えなければ別にどうでもいい。
生きてれば。実際、この状態を彼がいきていると認識できているか怪しい。
けれど、にとっては、正気がたもたれていれば(いや正気じゃなくたって)生きている、のだ。
「……」
泣きそうになったのをみられるのもしゃくで。
後ろからまわった腕におもいきりしがみついた。見られたくない――今は。
――これ以上、自信過剰になられてたまるもんか。
そういう気持ちもあるから。きゅっと、その腕にしがみつけば……
「っ……」
なぜか、相手が凍った。
「?」
一瞬、緊張感がとけて、ふりむ――こうとしたら、何故か後頭部をくいっと押され、再び前をむかされる。
「な、」
何するんですか?
言うよりも前に、
「慎みを…もちなさいと、」
いったでしょう。
「あ……」
ぎゅっと腕をかかえこむということはすなわちそれは……
「馬鹿馬鹿しくなってきました。色気以前に意識のない貴女相手じゃ、食事にもなりませんよ」
言われる意味は明白で――おしつけられていた胸元から、するりと相手は腕をぬいて、しきりに視線をそらしているが……
それがどうやら動揺しているらしいことも、また何となくかぎとれるものだから どうしようか。
「えーと……」
「おふざけはここまでです。今日は寒い。これでもかけてなさい」
羽織らされた上着は、低温すぎてぬくもりがないのだけれど。
――山南さんの匂い……
なんか変な気持ちになってくるから、寝てしまおう。
はさっさと自分の部屋にもどっていった。
END
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