◇ オマケ 裏側〜少し後のこと◇


「お前、また抜けてきたのか?」

「いやいや、今日は仕事おわってるから」

「本当か。俺はいやだぜ。後で山南さんにせめられるのは。あのひと、おっかないんだからな」

「……シッテマス。私が一番知ってるって……」

「だよな」

「……ていうか、何とかならないかなぁと」

「何が」

「最近見張られっぱなしっていうか」


「ぷはっ」


あはははははははは。大爆笑の原田を前に、はちょっとだけ気分をそこねた。すねて見せるように、袖をつかむ。

「む」

とかいってるとなかなか可愛く見えるのは、原田からすれば「恋する乙女は誰でも可愛い」の原理なので、当然でもある。

「お前、暇なんだろ?のむか?」

「え?いいの?いいんですか?それ、こないだ島原でおねえさんからもらってた隠し酒って」

「おう。お前日本酒すきだからな。平助がびびってたぜ?」

ちらちらと見せていた酒を手前におき、とっくりの用意をしながら原田は笑う。はそうそうに警戒をといたようでニコニコとしていた。(そりゃあそうだ。原田が貰った酒はとても上物のである)

「あの味が分からないなんて平助がお子様なだけで……」

「はいはい。んじゃ、ま、いっちょ、夕飯前ではありますが、いっこん……ん?」


「?」


「いや……あー…悪ぃ、こ、今度な?」


「え?ええ????ええええ?」


ええ?が悲鳴になって、やがて不満になるその前だった。


――」

声をあげることもできぬほどの緊張が二人に襲いかかる。
というのも……

――誰かってきくまでもないってば!

は、声の調子で彼の心情は大体分かるつもりだった。
そして、このトーンは……怒っている。しかも静かに。
取りあえず「自分が悪いんだろうな」ということだけを理解した

同時に、唐突に表れた総長こと「山南さん」は、酒をとろうと手を伸ばしていたを原田の方からべりっとはがした。

瞬間、

「っ」

の視界は真っ暗になる。
温かく、ふんわりとしたそれは――

――布?

「風邪をひきますよ」

そのままいっそ引きずって行きそうな調子で、彼は後ろからを抱える(たんに急に視界がおおわれてがこけそうになったための、不可抗力なのだが)

そうして、部屋に戻るように促した。どのみちすぐに晩に呼ばれるだろうし、実際、恐らくは彼の上着を――かけられて気付いた。体が冷えている。
は、彼女の上司の「過保護」に苦笑する、原田の表情をみることもなく、大人しく、連行された。

END



※これは、はたから見ると甘いだけだが本人にとってはタダのイジメです。※