* * *
「ずいぶん遅いお帰りですね」
屯所に戻ると、帰りを待ちわびていた様子で、現況――山南が待ちわびていた。
すっかり目が覚めて、ひょこひょこ動いているを手招いて……
「先に戻りなさい」と命じてから、山崎の方にむきなおる。
「お手数をおかけしました」
うちの補佐が、と、軽く付け加えるのは、いつものことなのだが
「たまには休ませた方がいいと思いますが」
どうしても、今日ばかりは文句が出た。
「おや?」
何かに気付いたような視線が堪らない。だが、此処で言わないと彼女は無理をする一方だろう。
そのたびに自分が休ませられるとは思えない。
山崎はあくまで、土方の下にいて……山南の下のをどうこうする場所にはいないのだ。
「大分眠れていないようだったので」
具申した。
告げた声はとげとげしさこそないものの、しんと響くほどの強さを持っていた。
しかし、反応は意外なもので……
「分かってますよ。――ただ無理をしたいと我儘をいう子供は、手に負えないものですから……」
だから泳がせました。と。
彼女の上司は言うのだ。
今なら大事はないから「一度くらい倒れないと気付かない愚か者におしえるのにはちょうどいい」と。
言葉に反して、その口調が彼としては珍しく情を含むものだったから――
「そんな状態で斬れるのか」と――。彼女をきりすてられるかと、思いもよらず物騒な会話を繰り広げそうになってしまう。
けれども――
「ありがとうございました」
――っ……。
相手があんまりに穏やかに笑うもので、すんでのところで思いとどまる。
「私では、日の光の中で、のびのびとさせることは出来ませんから」
「それは」
「いえ、戯言ですね。こきをつかう言い訳です」
そうして何事もなかったかのように、
「さあ夕飯でしょう。私たちにとっては朝ご飯なのですが」
話を流して奥へと誘う。
どうにも苦々しい思いを山崎に残して。
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