「ねえ、千尋、なんてどうかな?――千がつくうえ、僕とぴったり合う名前だよ」
そうしなよ?
強要に近い調子で薫が言う。
「なぜ」
なぜ、お前に指図を受けねばならない。
風間はむっとしたように、立ちはだかるが――すでに、薫の膝には小さくてあたたかな物体――子供の姿があり、これ以上の言い合いをストップさせるのだった。
「決まりね。――ていうか、貴重な鬼の姫だから、分かってるよね?」
どこの馬の骨か分からない男に、あげるのは止した方がいいよ。
薫は暗に自分にくれ、といっているのだ。
むろんそのままくれてやるつもりは一切ないが……
そのときは、考えもしなかった。
まさかのまさか、薫どころか――
「大穴、にございますな」
「言うな、天霧……」
多少大きくなった幼女は、生意気盛りで、「伴侶」を選ぶ。
「しらぬい、がいいよ?」
「ちひろね、けっこんするならしらぬいがいーよ」と。
「お、おい……風間、はやまってんじゃねぇ。はやまってんじゃねぇぞ?」
俺はその気はないからな!
焦る当人をすみに、
「今のうちにやっておかねば」
流行る風間と――
「――だが、あの南雲の、彼よりはましかと」
「む……」
正論でさとして、彼を黙らせる天霧。
はてさて彼女の伴侶は一体誰になるのだろうか。
幼女最強伝説の幕開け。