【SIDE 獄寺】
「ねえ、獄寺君、彼女、いいね。可愛いし、意外と使える」
「っ……そ、そうですか」
「安心してよ。仕事としてだって。純粋にしっかりしているとおもうよ。もうちょっと鍛えればできそうだよね」
「…そう、ですか」
拍子抜けした。
と同時に、なんだか苦虫をつぶしたようなきになった。
鍛えればよく使える。というのには、まだまだは甘いところが多い。
――だというのにほめられてるなんて!!!いやいやいやそれどころじゃないだろ、おれ……
でも、羨ましい。
正直なところ。
その前に仕事をもう少しみっちり教えてからいかせるべきか。
そうこう考えてるうちに、自室に戻った獄寺に続き、がかえってきた。
一応、報告をといってあるので、不自然ではない。(別に夜中にどうこうしようという意図はない、と、獄寺はさっきまでの思考を他所に脳内で言い訳をした)
が……扉をあけ、
「」
声をかけるよりさきに、衝撃が胸を襲う。
正確には、どんっという、本当の意味での打撃。
「おまっ、いってぇ……」
「……ら……」
ごくで、ら。と
呼びかけられたのが自分名前であると気付いたのは大分あとになってからだった。
それより先にきづいたのは肩の震え。
――おいまて、なんだこれは?
状況がつかめなくなっているのは、途中であらぬことで、彼女に嫉妬してたせいだろうが、さすがに本格的になってくる肩の上下に、コトの深刻さを思い知る。
「ごめ……ちゃんとできな……った」
「もういい……」
頑張ったんだけど、なんか、うまくいかないと、困ったような、心底なきそうなつぶやき。
「で…でも……」
「ふるえてんだろ」
「馬鹿じゃねーのか」
そういいたいのは、自分に対してか彼女に対してか。
そんな泣いたりするほど弱くなんてなかったはずだ。それに、本人も泣きかけている事実こそ消すように、顔を上げない。むしろみせないようにぎゅうぎゅうと押しつけてくる髪からふわりとツナの香りがして……獄寺を複雑な気持ちにさせる。
頑張ってるのは認める。使えなくても(そこはどうしてもそれとして考えてしまう馬鹿でら)
けれど、「これじゃダメだよ」とただ悲嘆するだけでなく
「どうしたら、もっと」
もっと、役にたてるのかと、考える女の愚かさが痛い。
心底頭が痛い。
「あーもう、いい。取りあえず、お前は……」
「……お前は?」
「寝ろ」と。言うつもりだった。が、ここで?だろうか。その前に部屋に送るべきだというのは分かっているのだがこのまま別れていいのだろうか。
一瞬、思考がショートした。そうして、獄寺ははじめて、本当の意味ではじめて自分の状態を悟るのだ。手放せるはずもないくらい、大きくなった彼女の存在とともに。
「……ねぇよ」
――馬鹿はどっちだ。
渡せねぇよ――もう。
一度抱いた体は柔らかくて、まるで別のいきもののようだ。熱い、熱くて、解けてしまいそうだ。ツナの匂いはもう感じなかった。ただただ甘くて、純粋に香るは彼女自身のラベンダーの香水。
「ッ」
吸いこまれるように、唇に吸いついた。
そうして、そのまま――彼女をからめ捕る。
翌日、少女が起きられないくらいに、手加減もせずに。
* * * * *
「で?何その格好?」
ひととおり笑った後に、獄寺の方を向けば、
「っ、だ、だから……メイドのかわ、りを…」
「は、ははははははははは………なっ、何しちゃってんの?獄寺くん、きみ……」
顔を真っ赤にして、こともあろうに――メイド服風の制服に身をつつんでいる男(勘弁してほしいけど右腕)をみて、居をつかれた。再び爆発力の高い格好に、意識をもっていかれる。
大爆笑。
完全なメイド服は、無理だったのだろう。きこなそうとしたあげくに改造したらしく、スカート部分はきれてる。きれてるが、元がわかるだけに、しゃれにならない。
これじゃあ給仕とも誤魔化すこともできなければ、完全に女性物であることがかくせてもいない。(いわばスカート丈を短くしてその下にスーツがわりの七分丈のパンツをまとっているトテモ中途半端な格好だ。
そのうえ、羞恥心と屈辱と申し訳なさからだろう。複雑というより、もうただただ紅潮してしまった頬と、そらされた目が痛々しいまでに「ツンデレ」を表現している。
――やばい、何これ!おかしいんですけど!
こんな顛末は流石に期待してなかった。
ツナは心底から久々に笑った笑い倒した。そして、もう駄目だと思った。
――ちょっかいかけると面白すぎるけど、これ毎度やられたら仕事にならないよ。
というわけである。
それに、実は昨晩何が起こったのかも大体わかっていた。こういうときに、役にたつのがいいのかわるいのかボンゴレの超直感。
――まあ、いっか。
2日ももたなかったけれど、これはこれで正解なのだろう。
そして、もう二度と、獄寺も馬鹿な真似はしないだろう。
「可愛くないメイドなんていらないって」と苦笑すれば、大真面目に
「可愛いだけでいいなら、他をあたって下さい。あれは、……そういう対象以上に…」
「以上に?」
「じ、自分にとって……」
しどろもどりに、言ってくれたのだ。
「大切なんです」と。
それも「ボスと同じとはいいませんが、あれは誰からも自由であってほしいもの」だそうだ。
「じゃあ仕方ないね」
だから今日からはいいとするよ。だからさっさと君もきがえておいで?
いえば、ぱあっと、いつもどおり――いや、久々だろうか、まるで10年前のように目をかがやかせて、「ボス」と叫ぶ右腕がいる。
これもこれでどうだろうとおもわなくもない。何より流石に彼女が不憫でもあるので(このうざさに捕まってしまったことも含めて)
プレゼントを一つ。くぎをさしてあげておく。
「でもさ、そんな自由にしてると、誰かにもってかれちゃうよ」
と。
「だから、さっさと、言葉だけじゃなくて本物にしてあげてね――」
「それは……」
「だからさ、彼女を、正式に、キミの奥さんにさ」
「っ」
意味が分からないわけじゃないだろう?
といいながらも、本当は分かってないだろう獄寺に告げれば、さっきとは違った意味で真っ赤になっている。
――だ、だめだ……降参
おかしすぎるって。
その格好でもじもじされてはたまらない。また笑いの神様がおりてきそうになって、ツナはあわてて、退去を命じる。
「今日はもう、休んでいいから。彼女のそばにいてあげなよ。どうせ、気付かないくせに自分から無茶をしいたんだろうから」
逆効果。真っ赤から、更に真っ赤にかわっていく右腕の顔をみながら、もう笑いを堪えることすら放棄することにしたボンゴレ10代目。
そのあと暫く応接室にはボスの大爆笑が響いていたという。
END
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