「あのさ、ロミオって類じゃないよね」
「何がだ?」
間抜けな声がかえってくる。
「んや。えーと…」
「ああ、あいつか」
「わ、わ、なんでわかってるの!てか、何わかってるふうなの。スクアーロの馬鹿」
「馬鹿ってお前……ばればれだろ」
「そんなに?」
「ああ」
跳ね馬のどこがいいのかわからないがな。
つけたされた「相手」が どんぴしゃだったものだから、はびくっとした。
「いや、その……ほら、ちがう人かもしれないじゃない、えっと……」
「ロマーリオか?」
「いやいやいや」
「ダンディでいいっていってたな そういやお前」
「いやいや、でも恋愛の対象としては」
「ベルかぁ?アイツだけはやめとけぇ」
「ない!ないから」
「だよな」
俺も同級生の死体なんぞみたくねぇ
スクアーロは半分本気だったらしく、にやりとわらった。
「で、どうすんだ?」
「どうするって…」
「いわないと、あの鈍い男のことだ。ずっと気付かないぜぇ」
「そりゃ… そうだけど」
わかっていても、踏ん切りがつかないのだ。
自分の所属するボンゴレと、彼のファミリーは別。とはいえ、同盟ファミリーであり……今のところ、キャッバローネ側も、早急にどこかと同盟を組むような必要もない――ボンゴレ本部の自分にも恋愛のチャンスは残っている。
そんなことは百も承知だ。
「むしろ、10代目のガキからすればわたりに船じゃねーか」
そこは自由なイタリア風をおしとおしても問題なさそうにみえるが何が問題なのか。
覗き込むスクアーロの目は、真実そうおもってるらしく……は、焦る。
純粋に心配されているのは、本当は分かってるのだ。毎度、後押しされにきているリリにつきあってくれてるあたりも――そろそろ疲れてるだろうから、さっさとくっつけということなんだろうが――分かる。
「ま、ロミオって柄じゃねーな。確かに」
障害はないじゃねぇか。
「まあ……」
「むしろだな――」
「?」
「障害があるんだとすれば――」
銀色の髪を邪魔そうにかいて、「あ”−」と濁った声で、スクアーロが詰まる。
と、そこに別の声がまざる。
「――お前の方だもんな」
「っ」
「山本……君?」
「おう、。元気か? てか、ディーノさん待ってっけど、いいのか、ここにいて?」
「あ、うん……」
「おら、いけ。会いてぇんだろ」
「う、ううん。でも、なんていうか……今日はスクアーロにあいにきたわけだし」
「おまっ――馬鹿かあ? そんなんだから何年たってもお友達のままなんじゃねえか」
「ど、どなんないでよ。そういったって、ディーノってなんだかんだいって、恋人とか興味ないし……」
「本当か? 先月女つれてたぞ?」
「ばっ、山本!」
「えっ――」
待ってまってまって? ええと……
つまり、ディーノにはすでに恋人がいて……私……
失恋、っていうことだろうか。
――というか、というかこの反応……
「あー」
「あちゃあ」と、顔にかいたその反応。
知っていたのだろう優しい相談者殿は、ちょっとだけ肩をおとして、
「まだ分からねえだろ。誰がすきだからって、関係ねぇってんなら俺がそれをしらせてどうってこともないはずだ」
正論を述べてくれた。
「はは、スクアーロやさしいのな。けど、教えて欲しいもんじゃねーの?」
な?。
呼びかける山本の言葉が刺さる。
確かに――普通ならばそうだろう。
――知りたかった?
それとも知らずにうじうじと悩んでたかったのだろうか?
それ以前に今、傷ついて――るか。
「、泣いてんな……」
「泣いてなんか」
ないよ。
だってジュリエットにすらなれてない。
告白すらしてないし、けどこの先奪還するかっていうと――怪しい。
というか、無理だ。100%無い……。
だってディーノは……
「強がりもたいがいにしろぉ」
そうスクアーロは言ってくれるけど、私――
「っ」
涙はいつまでも出ない。
それよりも、髪にふれられた冷たい金属の手に、びくりと、する。
なんで?
スクアーロがそんなになんで、困ってくれてんの。
なんで、そんなふうに……
「はは、強がりっていうか、鈍感も、だろ。。スクアーロもさ、いい加減ロミオ役回避すんのやめとけよなぁ」
爆弾を落としたのは山本。
(いやこの人今日ずっと爆弾しかおとしてない。ゴクデラに習ったのってくらいに)
「ロミオ回避?って……」
「あ”あああああああああああ?」
「ザンザスもツナも、許さないからって指くわえて誰かにもってかれんの待つのはどうかとおもうぞ」
それだけ。
そういって、過ぎ去って行った嵐――(雨だけど嵐のようなひとだ)
そちらを見るうちに気付かなかった。詰められている距―――
「スクアー……」
「、よく聞けぇ」
「……」
「俺も大概へたれだった。認める。山本に免じてそこは、認めてやる。だから、だ――」
「……」
スクアーロ、ねえ、アンタがへたれだなんて何年も前から知ってたよ。
でも何を言い出すんだろう。
まっすぐ、見る目が――獲物を狙うみたいに鋭いから、また一瞬、つかまれた肩が揺れる。
それに反応することなく、
「跳ね馬のこと諦める気がなくても関係ねぇ」
「……」
「十代目のがきに反対されようが、ボスさんに殴られようがこうなったら仕方ねぇ」
「ええと……」
それはどういうことか。
きくことは卑怯だ。ダメだ。きいたら。今きくわけにはいかない。
――だって……
分かっているのだ。
ディーノを追うつもりなんて、ないこと。そういうふうには、求めていないこと。
さっきだって、ディーノに会うより、優先したのは――
「ストップ!!」
でもだめ。
ダメ、いっちゃだめ。言わないで。
「無駄だぁ」
もう無駄。いいながら、その手が耳にある私の手をどける。
腕を捕まえ、接近したことがないくらいに傍に――
「お前が跳ね馬を好きだって言いだした時期をしってるぞぉ」
――だからダメだって。
「ロミオには靡かないんだろぉ? だからアイツにしとくっていうのか?」
――ああ……
気付かれてる。
結局私はあのときから――
「ヴぁリアーだけは恋愛禁止、だったかぁ」
****
それは、数年前の話――
本部に出入りしていて、気に入ったメイドが出来たとか、ベルがいいだしたのが発端だった。
ベルが恋? なんの冗談?
そう思うまでもなく、ベルは彼女を連れて帰ると言いだして――
スプラッタものの大惨事になったあげくに、彼女はボンゴレ自体もやめてしまったわけだが……
直後、十代目の執務室は一時騒然となっていて……
『だからさ、ヴぁリアーだけはダメっていったのに』
『そうっすね……そもそも、使用人はともかく基本的に本部の人間はあっちとは交流しないようになってたんですが』
『でも、ゴクデラ君。あっちと連携とれなきゃいざってとき大変なのは……』
『はは、そんくらい、スクアーロが何とかしてくれるって? なあ、ツナ』
『うん、いったんヴァリアーとの交流を多くする動きはストップかな。やりとりは極力俺が直接にするよ』
本部に出入りするのは、そのときからスクアーロがメインになった。
それから――
『ヴァリアーとは、使用人ふくめて、女は合わない方が無難かもしれませんね。仕事でかかわりになるやつも、まちがって今回みたいに惚れたはれたとなるとまた切り刻まれかねない』
『――気はすすまないけど、そうかな』
ヴァリアーとの恋愛禁止……
*****
「あれはベルのせいだぁ……」
「でもっ――」
「お前が跳ね馬をすいてるならそれでよかった。が、ただのイタリアン貴族の悲劇にとりつかれってるっていうんなら」
「スク――」
アーロと呼ぶ声は出せない。
噛みつかれる。
唇に。それから……
歯型が残るくらい、その鮫はおもいっきり――ドレスから出た肩をこともあろうに、かんで――
「俺はマキューシオを狙撃する側の人間だぁ。ロミオなんて殺してやる」
*****
後日
「で、結局くっついたってわけか?」
「そういうことみたい」
「はは、ツナや俺が危惧するまでもなかったってことか」
「俺は、そうなるかなって気がしてたから」
「超直感に裏付けされたら、しかたねぇな」
だろ、?
と、話をふられても困る。
「……」
何だろう。この状況。
十代目とキャッバローネのボスに囲まれて、
よってたかって仕事の邪魔をされている現状だ。
出かける時間がもうせまっているというのに。
「ことによっちゃ、俺はジュリエットを逃しちまった残念な男ってことか」
「ディーノさん…そういうわりに残念におもってないでしょう」
「ツナ、失礼だな。と俺はこれで、長いんだぜ?」
そこは本当。でも――
「友達として、ね」
長い片思い、でもあった。
けれど、それだって本当は――
「スクアーロ以外なら、俺ってんならそれもそれで光栄だぜ?」
「ち、ちが……」
「わないだろ?」
「……ごめ……」
「いいんだよ。俺は嬉しいんだぜ?級友がくっついて。あれでも、変に忠実だから。強ちザンザスにからかわれたのをうのみにしたんだろ」
実際、ザンザス側からすると、本部の女なんて、という感覚はまったくなく――本部からぶんどってくるなら、大したもんだくらいにおもっていたと……後で聴く羽目になるともおもわず、は苦笑いした。
「それにしても、ほんっとスクアーロってロミオって柄か?…あーでもちょっと分かるかもな」
「あー」
「?」
ボス二人は、納得し合うようなそぶりで顔をあわせ
「最終的に貧乏くじっぽいところ「貧乏くじひくから」
酷いことを言っていた。
でも、――……ジュリエットって柄じゃないから大丈夫。
今日は最後の日だ。
――私は明日からヴァリアーにいく。
引き裂かれることもない。
「っていうか、。なんでいっちゃうの? 同じボンゴレ内だから、別に離れ離れになんてならないのにさ」
「いやいや、あっちとはなんだかんだいって、キャピュレットとモンタギューだろ?」
「そうでもないんだけどなぁ。最近ザンザスもまるくなったから」
「………」
もうこれ以上、離れるつもりも、振り回されるつもりもないから、さっさとたいさんするに限る。
ロミオをころした凄腕の殺し屋は、もう門の前まで迎えに来てる頃だから。
END
END
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