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「なあ、認めろよ?好きっていっちまえば、俺はお前のためになら……」
「駄目。――ぬける、なんて許さない。私は、あなたが」
「新撰組だから、か? 原田っていうやり使いに惚れたのか?」
「ちがうだろ?」と、指先が首筋を走る。
――流されてしまう――このまま、では、そのまま……。
は着物の端を浚い返し、距離をとろうと俯いた。
「ズルイ人」
「知ってる。――大人だからな」
でも、お前は知らないだろう?
せつないような声は、作っているのか本気なのか。
「ずるく回り込むようなやり方しても――お前を逃したりなんてしたくないんだよ」
『俺は、そう言う男さ。願うのは、可愛い妻と子供を得て優しい生活をするだけ』と……
夜にのせて、囁いたあれは、本当の願望だったのだろうか。
――だとしても、もう……
振り払うしかできないのは、彼の志を……見てしまったから。
佐之と……そして、あの――
「ごめんなさい」
指先が一つの恋の終わりを告げる。
その目には彼しかいないのに。強烈に、あの後ろ姿が焼き付いて離れないのだ。
愛してるのは、一人。
けれど――
「……戦って……佐之さん」
「………お前の、望みは、それか?」
「うん。佐之さんが前を走るのならば、私も走れる。けれど、此処へとどまるのなら」
嘘だ。
走れるだろうは、新撰組――そして、あの、鬼。自分は走れることも、止まることもできない。けれど……
「やりを振るう佐之さんが好きよ」
女をまもる強さよりも、何かを見る眼差しを――彼女は知ってしまったのだ。
佐之も、もつ、もう一つの眼差しを。
そして、それに恋をする前に決別する――そう選択した。
「――見ていないだろう?」
「そう。見ていなくても」
「見ててはくれないのか?」
そのまま、島原を足抜けし、組を抜けぬ自分についていくこともまた選択なのだ(きっと近藤はそれをゆるすだろう)
と、そう、佐之は問うている。
分かる、分かるのだけれど――
「もう、恋は、したく――ないの」
「そっか」
「島原の夜はいつも、夢。お互いに、いい夢を見ていた―――」
「ああ、そうだな。――とびきりの、夢だった。一番上の、命をささげてもいいと思えるような、女がいたんだ」
「―――――さようなら」
「何、また夢で会えるさ」
うそぶいて、佐之が去っていく。
その姿を見ることも敵わず、遊女は涙を流した。
愛したのは、この男か、それに気付かせたあの後ろ姿か――それとも……
答を出すのは止めておこうか。どちらにせよ、夢なのだから。
END
別主人公でらくがき。
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