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【SIDE 跡部】
授業は滞りなく進んだ。
発言が必要以上に注目される授業はいくつかあったが、他はあんまり氷帝と変わらなかった。
休み時間を過ごして見れば分かる。
は期待されて目立ちに行くことはあっても基本的に静かに暮らしていたらしい。
に会いに行く以外は取り巻きを適当に追い払って、読書か生徒会の書類整備をしていたとか。
――要するに、難関は昼休みってことか。
その昼も手前、たった今、四時間目の終業のチャイムが鳴った。
学食やカフェ、ロッカーに人が散っていったところだ。
――昼は生徒会室だったな。
今朝慌ただしかったこともあり、弁当はなかったが、代わりに〜とが渡してくれたチケットはまさに生徒会用。
仕事が忙しいと食堂のマダムが届けてくれるらしい特別支給のものだ。
ちなみにマダムは氷帝のシェフと学園祭を舞台に毎回戦っているので本来の俺(跡部景吾)の方にも認識がある。
味は確か。むしろ、外食の多い自分でもシェフやマダムと張り合える腕前のものはほとんど知らない。
――ただ、生徒会室のみで有効なのが、な……。
生徒会室影の主ことを思うとあの上等なランチを蹴ってまで逃げたくなるの気持ちが少し分かる。
あの深い洞察力つきの鋭いツッコミは……疚しいことがあるとき、本当に効果的だ。 それほど、一見お姫様してる少女は強烈に厳しいのだった。
……と考えていると「王子ってば」と急に肩を叩かれた。
――王子って俺か。
振り向く。
「王子、行かなくていいの?」
声の主ははきはきしてるつもりがなりきれてないようで若干間延びした調子できいてき
た。
ただぼへらっとした印象に反して、見た目は凛としている。
ボブカットの体育会系・さっばり美人でほどではないが、中性的……。
ただこう目線をあわせてみると背もあまり変わらないのにいかんせんお子様にしか思えないのは圧倒的に足りない色気の差か。
――にしてもまた見た目と中身が違うパターンか?
最近はギャップに惹かれるやつが多いらしいがそんなにころころ印象の代わるやつなぞそういてたまるものか。
ただでさえにびびらされてるのに次はこれか?
「アーン?」
――やべぇ……
つい素がでそうになってしまった。
せき込んで誤魔化す。
だが、改めて気持ちを切り換えてみるに、こいつはほど気にしなくても良さそうだ。
――頭がまわるとは思えねぇ。
何故という理由はないが「筋肉馬鹿」「天然気味」というキャッチコピーが浮かんだのだから仕方ない。
ついでに、そいつと来たら、
「姫、待ってんだよねぇ?」
どうやら違うと答えて欲しいような、変なこと聞いてくるし…
「あ?」
よくよく見れば既に断られたような泣きそうな顔をしているし。
――そうか。
疑問は不意に解けた。
――こいつ、が断るって知ってて確認してんだな。
からかいやすいその様子に興味が沸いた。
ここは馬鹿正直に答えた方が面白い。
思い付くなり口が答えを選んでいた。(俺もだが、もそういうヤツだ。身体はちがえど同じことしてたと思うぜ?)
「ああ、多分な」
「今日だけ抜けられたり――」
「しない」
ここぞとばかりに言い切る。
途端に、顔が崩れ、情けなくなる少女A。
本当はもっと遊んでいたいが人さまの身体ではあるし、何よりに疑われては歩が悪い。
――遊んでる場合じゃないからな。
「やっぱダメか」
ちぇっと舌打ちしているそいつに、演技してたにせよ、何となく謝りたくなって
「悪い」
一言口にしたら、「暇ならまた打ち合いしてよ!っと、これまた夏の勝負もついてないしね」などと 反対に励まされてしまった。
結局とこいつの関係は見えない――ただがさり気なく面白がっている予想はついた。適当に切り上げるにあたって、名前くらい聞いてやるかと思い、
――ダメだろ……
今の自分が置かれてる状況に息を吐く(今きいたところで、の奇行にしか映らない)
ただ何故か、
「おい、知世」
「え?今名前――」
呼び名は違ったらしいが、ふと思いついたそれは当たっていたようだ。
が、一応に慌てて付け足した名前だ(後もうひとり……と、薔薇の幹部が残ってるがコイツは真っ先に言われていたから覚えている)
との関係はわからないし、普段はあんな我侭をいってみたりなどしないのだろうが(「泣きまね月間だったんだけどさぁ。やっぱ通じないもんな、には」だのとうだうだ述べてる少女は、どう考えても駄々をこねるタイプには見えない)居心地は悪くなかった。
まあ後で、から彼女の奇怪なあだ名についてきいてびびるわけだがそれはまた別の話。思いもよらないの学校生活を楽しんでる自分に気付いて、にやりと思わず笑いがこみ上げてきた。
――どうせあっちは勝手にやってんだ。すきにさせてもらうってのも有りだろ。
とはいえ、行く手には最大の難関が待っている。
――
いわば、この姫宮の城のクイーンだ。
丁重に、ばれないように、しなくては後に支障が出る。
気を引き締めて、タイ(ってよりリボンに近いが)を直し、生徒会室に向かう。
初対面でもないのに、妙に緊張する自分を知っていたが、さっきのことで少しだけそれすら愉しくもある。
「お手並み拝見と行くぜ」
とて、どこかで、ファーストコンタクトをとったはずなのだ。
ならば、この身体でそれを追体験するのも悪くはない。
背を伸ばして歩けば、いつもより若干低い視線もさして気にならなくなっていた。
TO BE CONTINUED…… |