◇ 行事はいつでもマジになれない ◇(ある意味逆ハ?  WD遅れすぎSS


【序】 滝によるスタート地点でのちょっとした感想

 跡部は一日悩んでいた……と、滝は思う。
 思い切ってきいてみようかとも瞬間考えた。

 ――却下だね。

 面倒は直ぐそばに、近寄れば数歩近づく。
 その勘は正しかったのかもしれない。
 跡部の握り締めていたものは可愛らしい小さい熊。
 横の瓶には白いチョコレートが見えた。

 ――まさか……。

 そのまさかを確かめる無謀さを持ち合わせない自分を、
 滝はこのときばかりはありがたいと思った。

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 朝一番、教室に入ると宍戸に会った。
 クラスメートなんだから当たり前だが。
 
「おはよ」

「おう」

 礼儀程度に朝の挨拶を交わして(友人がいたときならまだしも一対一で宍戸と話すのはあんまり得意じゃない。後輩の長太郎は苦手だし共通話題に欠く嫌いがある)席につく。

「朝早いね」

「こっちは練習が早く切りあがったんだよ、女がうぜぇからって。…ったく激ダサだぜ」

「テニス部は毎日大変だね」

 そうだよなぁ。
 あの女の数じゃ、引退後せっかく運動しにいってもギャラリー邪魔で集中できないか?
 ふむふむ。
 頷きながら、私は鞄を整理する。

「そっちこそ早えーな」

 会話が続くとは夢にも思わなかったためスルーしてたら「おい、きいてっか?」と畳み込まれて

「あ、ごめん。急いでたから」

 一応謝罪。宍戸が嫌いなわけじゃないので。

「そういや、朝練、早く終ったって?」

「ああ」

「それって二年も?」

「長太郎も一緒に上がったからな。皆あがったんだろ」

 いや、彼はどうでもいいんだが。
 てことは……日吉も終ってるよね?
 うん。
 じゃ……

「ありがと。じゃ、ちょっと行ってきます」

 挨拶を入れて、私はドアに直進。
 一々断る理由なんてないが、なんとなく他に人がいない教室に一人残すのに無言はどうかと思ってのこと。
 でも、宍戸は

「おい、待て!」

「はい?」

 いや、呼ばれましても?
 理由がないんですが……。
 日吉に会いに行くのが十中八九どころか99パーセント知られてるにしても、ね?

「日吉に用事?」

 万が一の可能性で聞いてみる。(さっきまで会ってたんだから違うだろうが)

「……ちげぇ。コレだ」

 そういって、宍戸は小さい袋を放った。
 なかなかのコントロールで。
 放物線をかいて、それは私の手に納まる。

「ん?」

 袋には煌くGの文字。
 よもや……

「何ほうけてんだよ。お返しだよ、お返し」

「やっぱ?ホワイトデーの?」

 うーん、もらえると思ってなかったんだけど。
 意外だわ。
 義理堅い性格は知ってたが本当にくれるとは……。
 (去年はから貰ったが、から行き渡ったという宍戸からは貰っていない。当たり前だ)

「催促しちまったみてーだし」

「うん。ありがと」

 この人、照れくささが伝染させる名手だと思う。
 私はできるだけカラッと笑って、さっさと教室を後にした。
 ――まあ、もらえるもんは貰うわな。……美味しいチョコだし。(高級である必要性はあんまり感じないが店で買うやつの姿が楽しそうなのでOKとしよう)
 一人目ゲット。
 
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 これで終わりかと思ってたら、そうでもなかった。
 本当に純粋に本を仮に行った日吉は、

「そろそろ来るだろうと思ってました」

 と、嫌そうな顔で、可愛いクッキーの詰め合わせをくれた。
 食い意地が張っていると思われているのか、それとも日吉のこと好きだと思われているのか(本当に好きだけどね?)いまいちわかんないが、素直に受け取った。

「ありがと」

「滝さんからは貰ったんですか?」

 おやライバル視?
 まさか、ね。

「違います。毎年あの人ならそつなくこなしそうだと思ったんで」

「ひどいなぁ。滝は特にくれないよ?」

「え?」

 あ、驚いた。
 日吉は口を開いた。
 私にあげたのを後悔したのかなと思ったが、そうでもないらしい。
 「意外だ」と小さく呟いてたから、本当に単純に驚いただけなのだろう。
 お返しの代わりに、休みに家に招待して、美味しいケーキ(彼じゃなくて母君特製)をくれることは黙っておこう。
 滝も大概日吉のこと可愛がって(からかって)るみたいだし。

「チャイムなるから行くね。ほんとありがと!大切に食べるよ」

「どうせ沢山貰うんでしょうが一気に食べない方がいいですよ」

「太らないように、でしょ?」

「ええ」

「ムカつく」

「事実です」

 やっぱり可愛くないが、そこが日吉のいいところであり、お気に入りな場所。
 だから私はささっと退散することにした。 
 まだ数分は粘れたし、日吉のクラスメートを威嚇したかった(誰のものにもしたくない気持ちはやっぱりあったりするのだ)けれど、引き際が肝心。
 去り際の美しさを演出するつもりだったが、最後の置き台詞が「昼、食券買っとく」じゃ締りがないわな。
 それでも一緒にいられるんだし、いっか。
 二人目ゲット。

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 三人目は帰る途中の廊下にいた。
 目立つ目立つ。
 「そのまま来んなよ」と暗示をかけたも無視して、すっ飛んできた。
 いいやつなんだけど。(たぶん)

「よっ!。これ、やる」

「やるじゃないだろ……」

「え?」

 凍られたかなぁ。
 そういうイメージじゃなかったんだろうね、ガックン。
 滝の横では比較的抑えてるモードの私だから。

「嘘。ありがと。私なんて、朝宍戸に貰うまで忘れてたわ、すっかり」

「へえ。意外。女って気にすんじゃねーの?」

「それ、義理じゃないっしょ?向日、さりげなく人を振ってそうだね」

「えー!そういう意味だったのかよ」

「まあそうとも限らないけれどね。お返しが高級だったり手作りだったりすればそれ目当てで渡す子もいるだろうし」

「げっ」

 女の子は現金なのだよ、君?
 向日が本気で嫌そうな顔をしたから、私は笑った。
 いいやつだ。
 安心して義理を渡せるタイプの人間だから、沢山貰ったんだろう。
 思って、手元の袋(お返し入りだと思われ)を見てたら、

「クラスのヤツとうちの委員長。結構世話になったから」

 なるほど、ノートね?
 言わずもがな私もよく提供するが、基本的にクラス違うし、被る授業でも理系は駄目だ。
 滝は程度を見て貸すだろうが――毎回は貸さないな、あの人は……。

「じゃ」

 と、来たとき同様向日は走り去っていった。
 元気だ。
 それと同時に出てきたのが……。

「あ?なんや、岳人もうおらへんの?」

 忍足。
 ……えーとあれは義理で弾みで徴収されたわけで……。
 戻ってこないのはわかってる。
 でもさっさと逃げ出したいのは何故?

「今教室に戻った」

 通行人A(ないし知人B)を装って通り抜けようとしたときのことだった。

「あー!いいんちょ――じゃなかった、えと、?やっけ?」

 ええそうです。
 ようやく名前がわかったようで……別に覚えなくていいのですが……。
 私は条件反射でこくんこくんと頷いていた。(まるで牛べこのようだ)
 
「後でジロ連れてお礼にいくわ。昼、学食やろ?」

 ぐわーっ。
 其の時間帯は。
 なんというか……。
 もう今更だが、滝と日吉と(ガックンはどうか?わからん)昼食だよ?
 邪魔されたくない、とはいわない。
 別に向日がいなくとも滝と忍足はクラスメートだし、日吉は後輩なのだから問題ないはず。
 でもあの二人には大体分かられてるからなぁ。
 微妙。
 というか微妙。

「うん」

 答えるけれど気持ちが一気にだるくなった。
 私はごまかすつもりで「ジロ」って誰だろ?と考えていた。
 あとで宍戸に芥川だと聞いて、「あーあのやたら眠そうで態度の悪い……」と答え、周りに素で退かれた。彼は人気者らしい。よく知らんが。(興味なし)

 >>>>昼休みへ続く

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