【佐助 SIDE】
「今日は俺、パス」
久々に佐助のバイトも休みだから、政宗、慶次、元親と四人でゲーセンかカラオケでもという話になっていた。
が……珍しく政宗から却下をもらったのは放課後だった。
「ちょっとな、馬術部に寄ろうと思ってな」
「へえ、馬術部に」
佐助は、一見興味なさそうに繰り返す。
でも実は非常に気になっていた。
――なぜ?なぜ今ごろ馬????竜の旦那、記憶ないよな。
「どういう風の吹きまわし?一応、水泳部に入部はしてんだよね」
今から部活探しでもあるまい。
何となく嫌な予感がして、遠まわしに聞く。
が……
「いや、小十郎――今慶次んとこの叔父貴のクラスメイトに、バイク免許の講習をうけてんだが。そこで、馬の話をきいて、興味もったんだ……あいつ、バイクは馬の代わりで最初は乗馬に興味があったっていってたもんだから」
悪ぃか?と尋ねられて、ぴしりと硬直する自分に気づく佐助。
小十郎――片倉小十郎。
別名、竜の右目。
前世では、右目の旦那と読んでた人。
政宗の従者にして、最高の相棒である。
――あちゃあ、あの人もいたのか。
いずれ会うだろうなとは思っていた。
思っていたが、こんなに早く、しかも慶次がきっかけであうなんて……
「――わざと、だったりしない?」
小さく、隣の慶次にだけ気づくように告げる。
だが、実際慶次が記憶をもってるのかどうなのか、若干佐助事態も把握できておらず、案の定今回も、
「ん?」
誤魔化されたのかなんなのか。
首をかしげる慶次は何も考えていないのかもしれない。
――あーもうっ
とはいえ、このメンバーの中では、他に……長曾我部は完全に記憶がないし、政宗もこのとおり。
乗馬が異常にうまかった政宗を知っているのは、佐助だけなのである。
小十郎は、今の話から察するに記憶があるのだろうが……
――余計なこと言ってくれちゃって……
もちろんそれで何が起こるわけではないだろうが、できれば政宗には記憶を持っていてほしくない、このまま敵対したくない佐助である。
(敵対も何もこの平和なご時世じゃ何もないだろうが、思い出したくないような出来事や気まずくなりそうな状況に過去何度も遭遇しているのだ、自分らと彼らとでは)
――取りあえず、俺様はサクッと逃げた方がいいな。今日は旦那も来るし。
計算は大得意。
ひとまず、気まずくなったり不可思議な言動をとる前に自分は離脱を図ろうと、佐助が思ったそのとき――
「佐助?」
呑気にクラスに入ってきたのは隣のクラス、真田幸村、こと旦那である。
自分のかつての主人は、だが、空気を読むのにたけていない。
というか、むしろ進んでマイナスの方向に飛び込んでいきがちの、「運」をもったお人だ。
――ああ……
何となく展開は読めた。
佐助はこの瞬間、竜の乗馬を見させられるだろうことに覚悟を決めた。
そして、案の定。
「おう、幸村も来てたのか?てめぇ部活は休みか」
「おう、今日はコーチが休みなのだ」
「よっし、じゃあ俺らも行こうぜ。いいよな。政宗?」
「Oh,That's Great!馬術部は実質部長と副部長しかいねーし、気心はしれてるやつだから、問題ねぇ。な、佐助」
「あ、はは……」
――決まっちゃったのね……
元親に肩をばしばし叩かれながら、一応反抗はしてみる。
「はあ……いや、でも俺様、動物ってちょっと苦手だったりするんですけど」
そうはいっても、こうなったら遅い。
空虚に笑う佐助に、幸村がようやく嫌なものを感じたのか、びくりと動揺のそぶりを見せたが、もう遅い。
「さ、佐助、何をしに行くのだ?」
「ささ幸村も佐助も、馬術部ったって二匹だし、うちの学校の厩舎じゃね。崖からジャンプしたり、ハードルもないから」
慶次が苦笑しながら、ずれているような核心に近いようなことを述べた。
かくして、前世の記憶持ち組にとって試練の時間が始まる。
* * * *
「Let's Party,Yah ha!」
「どうしてこうなっちゃったわけ?」
初めての乗馬なので〜と副部長自らに乗り方を教わっていたはずの政宗は、数分後には「まどろっこしい」と一人で乗馬をはじめた。
あわてて止める部長も、やがて「あれなら大丈夫。経験が……しかもかなりなきゃできねーことだし」とさじを投げている。
「えーっとこんなかんじでいいのか?」
元親は船をメインにしてきたからか、そこまで乗馬は得意でもないらしく、ゆっくり副部長の指示に従って乗っている。
慶次は、「俺も乗ったことあるけど、あそこまでかっとばせねーって」とうすらわらいを浮かべながらのりにのって、駈けずりまわっている政宗を見つめていた。
手綱さばきはもちろん、ハードルを飛び越えるだの、バックで走るだの(しかもあり得ない速度)政宗の馬術の腕は「芸」の域に達している。
というか、過去が過去だから分かってはいたが、「……えー……うそ〜ん」 と叫びたい佐助である。
横では幸村が口をあんぐりあけたまま、硬直していた。
「えーとさ、念のため聞くけど、竜の旦那、乗馬初めてっていってたよね?」
「あ?当然だろ。まあ、なじむっていうか、やり方は聞かなくても何となくわかるな」
「あー、なんか、あれだよな。政宗なら両手離してもジャンプとかできそうだよな。はっはっは」
――はっはっは、じゃねーよ、長宗我部の旦那!これ以上余計なこといわないでくれないかな……
「さす、さ、さ、さすけ……」
「はいはい、何?旦那」
言いたいことは大体分かるんだけどね。
笑ってる場合でなく、両手離しを実践しかねない政宗を、視線で慶次に止めさせながら佐助は、こっそりとため息をついた。
「俺は乗らないぞ」
「わーってる。俺様も乗りません」
何度かしつこく、お前らもきっと乗れるって。と二人には勧誘されているのだ。
いるのだが、予想外のことが起きそうで、正気気が休まらない。
さっさとこの場所を離れたいのが正直なところだ。
敢えて乗りたくないと思う自分たちは、二人とも記憶があるからこそなのだろうか。
何度も話し合った結果、割り切るともいえずと……納得した自分たちだから、敢えて過去に通じるものには触れないつもりでいたのだが……
「なんか、拘ってるのがバカバカしくなってきたかも……」
「某も……」
独眼竜は、かつてほど過激ではないが、馬を自由に乗りこなしている。
それどころか、
「ぶっ」
目を離したすきに、馬上から竹刀を持ち出していた。
ギャグの予定があれれ?はんぱになりかけたので 後半はおまけにしてみた。
取りあえず 馬はのれちゃうんだろうね。うん……なんでだろうね……と呆れてる赤の二人のはなし。だけのつもり。
おまけは、モブなあのひとです。