歌舞伎町二丁目。
午後四時。
遊び場としてようやく街が機能し始める頃、
似たような境遇の二人はその町の中心、コマ劇場の周辺を巡回していた。
文字通り「巡回」。
一人目は……
「ねぇ、サツの仕事って意外と地味なんだけど?」
「…………」
「……聞いてんの?」
「……ああ」
就任したての警察署長と、ヤンキーだろうか?……それにしてはここらでは見慣れないタイプの小生意気な可愛さを持った少年との可笑しな組み合わせだ。
「巡回」初心者の一人目はこの少年であった。
名前は越前リョーマ。
「急ぐぞ」
言って間もなく駆け出す署長は手塚国光。
この街には似つかわしくない真面目そうな青年である。
薄い眼鏡のクリアに近い、その縁がきらりと光った。
「後ろ三百メートル。恐らく連中だ」
「げっ……なんでわかるんすか?」
ここは実力と実力の戦う街。
相当の腕利きであることにまず間違いない。
「劇場の店主は古い知り合いだ。あらかたのことは先に聞いた」
「もしかして店主って……」
「ああ、観月だ」
手塚が昔の知り合いの名前を出すと、リョーマは黙り込んだ。
何の因果だろうか。
この町にはやたらと知り合いが多い。
先輩である手塚――他にももう一人先輩がいたが、あの人は怖すぎるので先輩という時限ではないとリョーマは思っていた――の話に、何となく惹かれて、入りかけている道だが、今更ながら険しく感じられる。
リョーマがやろうとしているのは警察側の情報屋。
この町ではなかなか生きづらい職業だ。
正式に警察で採用されるにはまだ資格と年齢が足りない為、こんな形でしか関わることはできないのだが、これでも署長(と裏で糸を操っているに違いない一般警官だと言い張る美麗な青年)によってようやく得た地位だ。
「なんだ?行きたくないのか?」
「いえ……別に……でもあの人、俺苦手ッス」
「なら不二に変わってもらった方がよかったか?よくないだろう?」
「………ウィッス」
一説には街の影の支配者とも呼べる「一般警官」の名前に、ようやくリョーマも、文句をつける口を閉じる。
本来は情報屋と警察(しかも署長)が一緒に行動などありえないのだが、一件、ただの警邏とヤンキーというよりも遊びにきて道をきいている少年のようにも思えるため、それからそもそもリョーマがこの辺の縄張りを仕切っていたヤンキーであったために、このような光景が成立することとなっていた。
言うなれば今日はデビューなのだ。