File:02 SIDE K・TEDUKA<
俺は小さく頷いた。
濡れてしまって額に貼りつく前髪を手で避けると、驚いたように目を見開いた跡部の姿があった。
千石はと言うと……どうにも読めない顔でへらへらと笑っている。
食えないやつだ。今更だが千石は昔からそういう奴だったことを思い出した。
「お前……本当に手塚なのか?」
「ああ。そういうお前こそ本当に跡部なんだろうな」
「アーン?この美貌を持つ奴が俺様以外にいるわけがねえだろ?」
「…………」
相変わらずだ。
この自信過剰な神経は一体どうやって培われてきたのだろう。
そんなことを考えていると、千石が急に何か思いついたようにぽんと手を打った。
「手塚君さ、そんな姿もなんだから、とりあえず部屋に行こうよ」
「部屋……?」
「そう、俺達の、まぁ……アジトってやつ?って言っても、上から割り当てられた所に強制収容って感じだけどね。それにそんな格好じゃ、ね」
確かに言われるまでもなく今の俺は外の嵐のせいでぐしゃぐしゃだ。
肌に黒い服がまとわりついて気持ちが悪い。
全身雨に濡れて急激に体温が奪われているのを感じる。
このままでは体調不良を起こすのは間違いなかった。
俺は言われるがままに部屋に案内されることにした。
まずは落ち着いて状況確認がしたかった。
案内された部屋は電気をつけても薄暗く、必要最低限の家具しか置かれていなかった。
見れば見るほど殺風景な部屋だと感じた。
「じゃ、また俺来るから」
「ああ、わかった。……ありがとう」
「!……いや、どーいたしまして。じゃね!」
昔と変わらず陽気な千石は俺に挨拶をするとすぐに部屋を去った。
いや、本当に昔と変わらないのか・・・?
それはあまりにも可笑しな問いだった。
馬鹿な。変わらないわけがない。
俺は自然と自嘲のような笑いがこみ上げるのを感じながら、小さな窓から覗く三日月を仰ぎ見た。
TO BE CONTINUED 千石SIDEへ
|