File:04    〜 SIDE Kunimitsu Teduka

「それで?何が聞きたい」

 跡部はぶっきらぼうに言った。
 その様子は、数年前と同じだったのだが、どこか疲れて見えて、俺は黙った。

「久しぶりだな、手塚よ」

 やむを得ない調子で跡部が続ける。

「……『命令ナンバー315。絶対条件AF』とは何だ?」

 何とか搾り出した質問はこれだけだった。
 本当は聞きたいことなど言い出したらきりがないほど沢山あったが、いざとなると口に出せない。

(特に今の跡部には……。)

 聞いてはいけない、そんな気がした。

「ああ。絶対服従。上官のサインだ」

「……そうか」

 あれから成長したうえ、こんな環境にいるとあっても、跡部には暗い雰囲気がなかった。千石の持つ影のようなものも感じられない。
 しかしながら、それが逆に全ての質問を封じてくれる。
 個人的な質問はよすべきだ。
 あまり面白くないだろうことは目に見えている。

「取りあえず、千石から大体は聞いたのだが……ここは何の組織なんだ?」

 基本的なところだけ。
 出来るだけ外郭から聞こう。
 俺は冷静を装って声を紡いだ。

「わかんねーよ……」

 跡部の答えは明白すぎるほど明白だった。

 *        *      *      *      *
 「分からない?」と口に出したわけではなかったが、顔に出ていたのだろう。

「不安になるだろうが、俺にはそうとしかいえねー」

「……そう、か」

「でなければ俺の家が黙っちゃいねーからな」
 
 跡部はそう付け加えた。
 ベッドの手すりに腰掛けて、腕を組む。
 傲慢さ手前の自信は健在のようだが、言葉には諦めが混じり、

「ただ、上層部のメンバーを知らないことはない」

 直接的なコメントもなく「NO」を示していた。

「教えてはくれないか?」

「知っても仕方ない。それに……そんなに表情に出るんじゃ言えねーな」

「表情に……?」

 出ているといえるのだろうか。
 そういえば跡部はインサイトを持っていた。
 あれは全てを見破るが、そのせいだとでもいうのか。
 不可思議に思って覗けば、窓の方をなんともなしに眺めた跡部は此方を向き、

「訓練されてる」

 簡潔に理由を述べた。
 だから、誰にでもある程度以上人の気持ちがよめるのだ、と。

「お前も受けることになるぜ?……直属の上官が誰になるかしらねーが、俺は運がねぇ」

(誰だ?というんだ?)

 首を傾げれば跡部は続けた。
 こちらを読んで、ではない。

「……アレで千石の方が上なんだからな」

 「それが何より認めたくねー」 
 そういって笑う跡部に、「ああ。跡部らしいペースだ」と、肩の力が抜けた。
 ここにきてようやく気付く。
 無自覚ながら、俺はよっぽど緊張していたらしい。

(仕方がない……ここは少しでも事情を話しておくか)

「詳しいことは俺も知らねーが。まあいい。まずは聞かせてもらおう」

「……最初は不二の電話だった」

 全てを話す。
 そう決心すると、もう一段気持ちが楽になった。
 跡部は敵にはらないと本能が悟っている。

(だが同時に味方になるかどうかは……)

 分かっている。
 そうだ。

(千石次第、か)

「アイツは話の分からないやつじゃねー。俺は『ラッキー』だ」

 そういう跡部に対して、楽観できない自分がいる。
 無論、跡部も全てを聞き終えると、「一言だけ」と、忠告を投げて寄越した。

「千石が教官になるかもしれねーが、甘くはない。それに、ソイツは伏せておいた方が無難だな」

TO BE CONTINUED =ちょっと前のこと


そのまま勝手にやらかします。

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