未知との遭遇 バス 前編 
【跡部MAIN】

「よお、久しぶりだな。幸村、真田、柳」

「ああ、跡部か。新人戦以来だな。ひさしぶり」

現時点でこの学年トップだろう男は振り返ると、気が抜けるような笑顔で対応された。
幸村というのはいまいち読めないから苦手なのだが、なんのかんのと実力のあるもの同士付き合いはある。
そろそろその変わった性格に慣れつつあった。

「久方ぶりだな」と言葉を返す真田も、
「氷帝からはお前だけか」と挨拶に続き質問を飛ばす柳も、
氷帝のメンバーとは違う意味で個性的だが、嫌ではない自分がいる。

ライバル、というのだろうか。
久々に気が引き締まる思いがする。

――……ま、普段が普段だからな。

どうかと思うが、敗者切り捨てとか格好いいことをいいながら、氷帝の日常はのんびりにもほどがある。

というか……同級生がもはや実力以前の問題で……アレなのである。
子供くさいというかなんというか。

まあそれで、真田と柳を見てふと「氷帝の連中と違うって、見た目の問題じゃねーよ」とセルフ突っ込みをしてしまう程度に、跡部も跡部でそんなチームメイトに染まりつつあるのだが。

何にせよ、久しぶりにしまった練習ができそうだ。
跡部はひさびさの感覚――試合前のような高揚感に軽く口元を緩めた。


 *        *      *      *

ところで、選抜合宿の開始は意外と地味だ。
現地集合の現地解散かと思えば、駅から距離があるという理由で最寄りの駅に待ち合わせとなっていたし、止まっているバスはしょぼい。
しょぼいとしか言いようがない。
氷帝で遠足用にチャーターした方がよっぽどいい。
そのうえ、マイクロバスときている。
まあこれが二年メインのものだから、ということなので大きさについてはいわないでおくが……

「おい幸村。こっちは出発できねーで、残されてて、前のが先に出発ってのはどうなんだ……?」

 さっき先輩とはなしていたのは幸村だ。だから知ってるだろうと話をふったのだが、

「手塚の代わりが到着していないからだ」

代わり即答したのは柳だった。
お前にはきいてねーよといいたい。
ところだが、幸村は当然のごとくこちらを見てもいないときている。
最初こそふざけたやつだと思ったが、どうもそばの花壇が気になっている様子。

「………」

真田が無言で頭を抱えているのをみて、何となく状況も読めてきた。
諦めて話を続ける。

「手塚の――代わり?」

きいてねーぞ、手塚はこねーのか、とは言わない。
来るだろうとは思って期待はしていたが、他にも凄いメンバーはたくさんいる。
三年はもちろんだが、目の前の三人がその最たるメンバーであり、跡部からすれば強い相手と打てれば構わない。
が、誰が来るのか知らされていないとなれば話は別だ。
――うちの連中を差し置いて来るっつーんだから、それなりの人材だろうな。
と、なんのかんの身内びいきで見ているせいかもしれない。

「ああ、うちのでもないよ」

ようやく幸村がこちらに向きなおった。
ってことは、ルドルフか六角か山吹か、と呟いてまた花壇に向かう。

「精市、そろそろバスに乗っておけ。後数分遅れたら自分で来るように指示が出るはずだ」

「そうか。分かった」

上手く懐柔しているのかなんなのか、柳はそんなマイペースな部長を押し込め、真田にも乗るよう促しながら、跡部にこっそり告げた。

「山吹の、千石清純。――うちの連中はあいにく興味がないようだが、俺は気になる。わざわざ山吹から、だが、ダブルスではなく、手塚(シングルス)要員ということだ」

「あ、ああ」

そいつは珍しいな。
素直に跡部は頷いた。
この時点までは、本当に本当に選抜合宿らしく平和だった。
適度な緊張感もあったように思う。
だが、その人物こそ、跡部の束の間の緊張感を吹き飛ばしてくれる最高の人材だったのである。
おかげで、お前らの可愛げがわかったぜ、とのちに跡部に語らせる人物、千石清純。
到着まで後五分。

続く。
  
  スタートくらいは 普通の日常ちっくに。