File:04.5   閑話   〜 SIDE K・SENGOKU

 跡部に話したのは、すべての始まり――不二の電話からの一連のことだ。

  ********** 〜手塚の話〜*********************
 分かっていたのは翌日に控えたプロ転向――大会への出発と、見送りがてらの同窓会。
 先に海を渡ってヨーロッパにいるリョーマ以外、全員の参加表明がなされ、朝から楽しみにしていた。
 様子が怪しくなってきたのは昼過ぎのことだった。
 夕方の集合まで大分あるからと、たちよった店で携帯が鳴った。

『手塚、今どこにいる?』

 不二の声に、ビックリしたのは話すのが実に数年ぶりだったせいだけではない。
 不二は今もテニスを続けていて、学生では負け知らずだったし、様子も伝え聞いていたから「がらりと変わっていたから」というような陳腐な理由でもないと断言できる。
 では何故か?
 それは、ありえないほどあの不二が慌てていたためだ。

「何だ?何かあったのか?」

『え、あ……英二が……英二が戻ってこないんだ』

「子供じゃあるまい。何処に行ったか分からなくとも、時間になったら現れるだろう」

 そうはいったがいいが、何となく嫌な予感がした。
 不二の説明によれば、昨晩先に、今日の用意と称した会合を開いており、菊丸もその場にいたらしい。
 だが、誰かから電話があって呼び出されたきり戻ってこないという。
 しかも電話の相手はどうもワケ有りらしく、俺だと思ってと尋ねた不二に、「ちょっと……」と言葉を濁していたそうだ。
 その様子は不審という感じでもなかったらしいが、明らかに動揺していたという。
 一通りの説明と、より細かなことを聞いてから、俺は、

「乾に電話しておく」

『そう、だね……。ごめん、急に。大石の心配性が僕にも移ったみたいだ』

「ああ」

『じゃあ五時に』

「河合寿司だな」

 電話を切る。
 約束どおり、俺はそのまま乾にかけようかと思ったが、通りが騒々しい。
 何があったわけでもないが、この道は元々交通量が多いのだ。
 先ほどの不二の電話も聞こえづらかった。
 俺はそのまま一度家に帰ることにし、元来た道を引き返した。
 だが、結局乾に電話することはなかった。
 何故なら――

「国光、連絡だぞ?竜崎先生からだ」

 先に集合前の呼び出しを喰らったのだ。
 無論悪い意味ではなく、先生なりのプロ転向に対するお祝いを兼ねてのことだろう。

『悪いが、こっちはまだ仕事があるからね。今日いけるかすらわからん。先にきてくれんか。渡したいものもある』

 こういわれてしまっては断われない。
 その上、「急ぐから出来るだけ早く」といわれてしまえば、俺の性質上、
 
「はい、直ぐ行きます」

 そうとしかいえず……また、いったら言ったで律儀に他の事はせず家を出た。
 どうせ夕方には会うだろう。
 乾になら大石が連絡しているにちがいない。
 予測してのことだった。
 が……。
 竜崎先生のもとから会場になっている河村寿司に向かう途中、だった。
 携帯には不二からのメール。

『英二が誘拐された』

「馬鹿な……」

 作戦会議を開いている最中、不二は俺に『一先ず明日の支度だけ先に終えてきて』ともう一度メッセージを送ってきた。
 そして……。


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「自宅に戻ると祖父がいたが、警察関係者にいっていいものかどうか判断に困ってな。俺は結局黙っていた」

「ほお」

「だが、おかしなことに祖父は無言でディスクを差し出して……」

「ソイツを俺ら(組織)が狙ってたってわけか」

「ああ。気付けば……追われていた」

(あの影は……。)

 心あたりがあるが、黙り込む。
 教官が千石かもしれない、そう聞かされたせいだ。

(よもやとは思うが……)

 可能性は否定できない。
 だが、跡部の目――事情は推し量れないが、千石に対して全面信頼には至っておらずとも何処か気を許して見える。
 
(跡部のことだ、千石が握っている情報が多いからかもしれんが……)

 だが、千石の方はといえば、明らかに跡部に対しては甘い。
 この短期間に、それだけは理解できた。
 跡部を一度追い払った後の遠慮のなさは、三人でいたときのものとは明らかに違って感じた。間違いないだろう。
 そうだとすれば、事情はあるにせよ、千石は味方になりえるのか。
 
(跡部が頼めば動くのかもしれない)

「千石が教官になるかもしれねーが、甘くはない。それに、ソイツは伏せておいた方が無難だな」

 出て行く跡部に、

「何とか此処を出る方法はないのか?」

 声を投げれば、

「抜け出す方法を知ってるやつなら知ってる」

 可笑しな解答が返った。

「千石だ」

 それなら跡部も出たいといえばいいだろうに。
 またも表情で推し量られてしまったのだろうか。
 跡部は嫌そうな顔をした。
 こちらもどうやら、他に事情を持っているらしい。
 しかし、それは教えてもらえないだろう。
 予感があった。


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先に跡部の事情=外伝側かな、次は。

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